
麻薬犯罪の捜査官が身分を隠して組織に潜入できる制度の導入が、韓国で現実味を帯びてきた。オンライン取引の高度化に対応し、従来の捜査の限界を補う狙いがあるが、実際の運用には仮想身分の整備という課題が残っている。
国会によると、麻薬類管理法の改正案は常任委員会と法制司法委員会を通過し、本会議での採決を残すのみとなった。改正案は、捜査官の身分非公開と潜入捜査の法的根拠を明確にする内容が柱となっている。
これにより、裁判所の許可を得れば、捜査官は偽の身分を用いて麻薬の売買や運搬に関与しながら証拠収集を進めることが可能となる。期間は3カ月単位で延長でき、最長3年まで認められる。また、身分を隠すための文書や電子記録の作成・変更も許容される。
背景には「置き配型」と呼ばれる新たな取引手法の拡大がある。通信アプリや暗号資産を利用し、公園や山林に薬物を隠す手口が主流となり、上位組織の特定が難しくなっている。警察によると、オンライン関連の麻薬事件は近年急増し、全体に占める割合も大きくなっている。
こうした状況から、現場では潜入捜査の必要性が強く指摘されてきた。捜査官が売人を装い直接取引に関与できれば、供給網の上流への接近が容易となり、摘発効率の向上が期待されている。
ただし最大の課題は仮想身分の信頼性にある。現在のオンライン犯罪組織は住民登録番号などで身元確認を徹底しており、単なる偽造身分証では通用しないとされる。そのため、実在の人物と同様に認証されるデジタル身分システムの構築が不可欠と指摘されている。
さらに、住民登録法や旅券法など関連法の整備が進まなければ制度は十分に機能しないとの懸念もある。捜査官の身元が漏えいした場合の保護や加重処罰規定の不足も課題として残る。
制度は大きく前進したものの、実効性を確保するには技術と法制度の両面での補完が求められている。
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