
韓国の田舎で鎖につながれて暮らしていた犬が、ソウルの4坪のワンルームで新たな生活を始めた。笑ってしまうようでいて切なさもある日常を発信し、注目を集めているのが犬のトリだ。
保護者のクダルさん(仮名)は、トリの目線で4坪の暮らしを「希望編」と「絶望編」に分けて紹介し、多くの共感を呼んだ。
希望編で描かれたトリは、思いのほか満ち足りた様子だ。ベッドの心地よさを知り、毎朝の“モーニングコール”も欠かさない。狭い部屋でも、いつも一緒にいられることに喜びを感じているという。
一方、絶望編では現実的な不便さも描かれた。駐車場1台分より狭い空間で、一度散らかせばすぐに大混乱になるうえ、プライバシーもほとんどない。さらに、ホームカメラで常に見守られているという演出も加わり、見る人の笑いを誘った。
ネット上では「幸せは広さで決まるものではない」「家の大きさより誰と暮らすかが大切だ」「これは1000万坪の幸せだ」といった応援の声が相次いだ。その一方で、「4坪で犬を飼うのは無理があるのではないか」と心配する反応も出た。
トリの生活が変わるきっかけは、思いがけない出来事だった。トリは7年間、田舎の庭で鎖につながれたまま暮らしていたが、飼い主だった祖父が体調を崩して施設に入ることになり、家族が引き取ることになった。決め手になったのは、「トリが行かないなら自分も行かない」という祖父の言葉だった。
ただ、実家ではほかの犬とうまくなじめなかった。そのため最終的に、ソウルで一人暮らしをしていたクダルさんの4坪の部屋に迎え入れられた。トリにとっては“犬生逆転”を夢見た上京だったが、待っていたのは想像以上にコンパクトな暮らしだった。
それでも、大きく変わったのはむしろ人の側だった。もともと外向的だったクダルさんは外出の機会が減り、友人との約束も控えるようになった。家を寝るだけの場所のように使っていた日々は一変し、ほとんどの時間をトリとともに過ごすようになった。
自由な時間は確かに減ったという。それでも、外出が少なくなった分、出費は抑えられるようになったと笑って振り返った。
さらに、トリはソウルに来て間もなくフィラリア症と診断された。治療費や世話のため、クダルさんは退職の決断まで撤回し、生活の方向そのものを見直すことになった。
それでも心の支えになった瞬間があった。狭い部屋の中で涙を流した日、トリが静かにそばへ寄ってきたのだ。クダルさんは、そのとき「この子と一緒なら、この小さな部屋でもいい」と思えたという。
トリは、特別な芸ができる犬ではない。基本的なしつけも十分とはいえず、反応も少し遅い。ただ、何もできないように見えるところこそが魅力だとクダルさんは話す。特技がないこと自体が特技であり、存在そのものが愛される犬だという。
現在、トリは治療を続けており、散歩にも制限がある。それでもクダルさんは、治療が終われば桜を見に行き、海やキャンプにも出かけたいと未来を思い描いている。
鎖につながれて生きてきた犬だからこそ、これからは愛されながら幸せに暮らしてほしい。田舎からソウルの4坪の部屋へと続くトリの物語は、いまも続いている。
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