
――日本と韓国のビジネス環境の違いをどう感じますか?
両国のビジネス環境や国民性の根底にある思考プロセスは、驚くほど異なります。日本は極めて強固な「信用社会」です。ビジネスにおいて物理的な拠点や実体(フィジカルプレゼンス)を非常に重視する傾向があります。日本国内に法人がなく、人がいない状態のまま信頼を獲得して取引を展開できるケースは極めて稀です。相手のバックグラウンドや素性、リアルなつながりを何よりも大切にします。
時間軸やアクションに対するアプローチも対照的です。韓国が素早く動き、予期せぬ事態には臨機応変に対処するのに対し、日本はリスクを事前にすべて列挙したマニュアルを作成し、時間をかけてでも完成度を追求します。遅れるリスクがあるなら最初から前倒しで取り組むという姿勢です。
この違いは投資の世界でも顕著に現れます。韓国の投資家は比較的ギャンブルを好む傾向があり、市況が良い時の資金流入の勢いは凄まじい半面、パフォーマンスが少しでも悪化すると即座に資金を引き揚げる離脱の早さがあります。
一方、日本の顧客は短期的な数字の変動よりも、長期的な人間関係や信頼関係を重視してくださいます。いったん「この企業なら信用できる」と判断してお金を預けていただくと、市場が一時的に浮沈しても、長期間にわたってじっくりと資産を委ねてくれる安定性があります。
現在、弊社の預かり資産のうち約30%が日本国内の顧客であり、そこに複数の国内銀行や大手証券会社、東証上場企業などが名乗りを上げているのも、時間をかけて培った信用が結実した結果だと考えています。
ちなみに米国は完全に「システムと数字の社会」であり、監査や外部検証を通過していないバランスシート(貸借対照表)は一切信用しないという割り切った合理主義が貫かれています。

――そんなロイドさんには、今の韓国社会はどのように映りますか?
韓国の前大統領のユン・ソンニョル(尹錫悦)氏は「韓国そのもの」のように思えます。ユン・ソンニョル氏は、司法試験に9年間挑戦し続けて合格した経歴を持ちます。この事実自体が、1回の成功にすべてを賭ける韓国的な馬力を象徴していると感じます。システムやマニュアルに依存するのではなく、個人の強烈な実行力や裁量、そして大きな賭けに勝つことで局面を打破していくスタイルは、まさに韓国のダイナミズムそのものと言えます。人の裁量が色濃く反映される点において、韓国社会の縮図のような人物だと捉えています。
――今後の日韓関係についてどう見ていますか?
政治のリーダーシップにおいて、お互いに配慮し合い、違いをコントロールできる成熟した関係が構築されつつあると感じています。日本の高市早苗首相や韓国のイ・ジェミョン(李在明)をはじめとするリーダー層も、実利的な外交スタンスを見せており、国際情勢の荒波を乗り切るために、お互いの立場を尊重しながら実務的な協力を進めていく現実路線が選択されています。
過去数年間を振り返っても、歴史問題などが過度に泥沼化して両国関係を根本から揺るがすような決定的な決裂は見られませんでした。一時的な摩擦が生じたとしても、それを適切にマネジメントできる関係へと進化しているのではないでしょうか。

――日本の若者へのメッセージをお願いします。
今の日本社会には一定の閉鎖的な空気が漂っており、他者や多文化とのポジティブな競争を通じて互いを高め合うようなマインドがやや希薄になっている印象を受けます。インバウンド(訪日外国人)の急増により外国人と接する機会は増えたように見えますが、それはあくまで「顧客と店員」としての関係であり、本質的な文化交流や切磋琢磨には至っていません。
しかし、ビジネスの世界を見渡せば、エンターテインメントに限らず、多様なグローバル領域で一流の仕事を実装している優秀な人材がアジアや世界に溢れています。
私自身、東京に住んでビジネスを展開する中で、日本の「平和で治安が良い環境」や「独自のコンテンツの奥深さ」は、極めて高く評価されるべきアドバンテージだと実感しています。特に、言語や現地文化を深く理解することで初めてアクセスできる日本のインナーサークルやビジネスの資産は、外国人の視点から見ると著しく過小評価されています。
一方で、日本国内の居心地の良さに浸りすぎると、現状維持の惰性に陥ってしまうリスクもあります。若い人たちには、日本が持つ圧倒的な強みを理解しつつも、定期的に海外へ飛び出して「モチベーション・ショット(刺激や活力)」を自らに注入してほしいと思います。多様な世界と自分を比較し、国境を越えた挑戦に果敢に乗り出す若い世代が増えることを期待しています。
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