2026 年 3月 10日 (火)
ホーム社会「働けないビザ」が若者を死に追いやった…韓国で起きた移住労働者転落死の真相

「働けないビザ」が若者を死に追いやった…韓国で起きた移住労働者転落死の真相

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「娘がどんな思いで3階の空間に身を潜めていたのかを考えると胸が張り裂ける。3時間以上続いた取り締まりが娘を死に追いやった」

2025年10月28日、韓国大邱・城西工業団地の工場で転落死したベトナム人移住労働者トゥアンさん(当時25歳)の父は、真相究明を求め続けている。

トゥアンさんは啓明大学国際通商学科を卒業後、大学院進学の学費と生活費を稼ぐため工場で働いていた。所持していたのは求職ビザ(D-10)で、合法滞在ではあったが、法的には就労がほぼ認められない状態だった。学業を終え就職が確定するまで「滞在は可能だが働けない」という制度の狭間が、彼女を危険な現場へ追い込んだ。

事故当日、現場では3時間を超える出入国当局の強制取り締まりが進められていた。市民団体によれば、当局は事前名簿の人数に達しないとして捜索を継続したという。背景には、法務省の成果評価が「摘発人数」や「送還実績」を中心に設定されている実態がある。適法手続きや人権保障は評価指標に含まれていない。

市民団体の集計では、2003年から2025年10月までに、取り締まりや拘禁の過程で少なくとも25人が死亡、32人が負傷した。恐怖から逃走して転落、海へ身を投げる、機械に身を隠して切断に至るなどの事例が相次いだ。数字は氷山の一角とみられる。

国際社会からの警告も続く。国連人種差別撤廃委員会は2018年に続き2025年も、構造的に未登録移住労働者を生む制度を放置したまま、抑止・取り締まり中心の政策を続ける韓国政府に懸念を表明し、死傷者の統計公開や補償を勧告したが、政府の対応は乏しい。

政府は2027年までに未登録移住民を約20万人へ半減させる目標を掲げるが、2024年時点で約39万7000人に上る。未登録率は船員就業(E-10)や一般研修(D-4)などで高く、職種よりも劣悪な労働環境や制度の硬直性が影響している。

専門家は、取り締まりで「排除」する発想から、制度への「適応」を支える管理へ転換すべきだと指摘する。ビザ活動範囲の過度な細分化が未登録化を招いており、職業選択の自由を広げ、事業場変更制限の緩和や現実に即した就労経路の拡張が必要だという。強制取り締まり一辺倒を続ければ、人権先進を掲げてきた韓国の国際的評価を損ねかねない。人権基盤の滞在・労働政策への構造的再設計が急務だ。

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