2024 年 4月 17日 (水)
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「韓国版ニュー・スペース時代」に近づきたい [KWレポート] 「宇宙経済」カウントダウン (1)

(c)MONEYTODAY

韓国の国産ロケット「ヌリ号」が先月25日、打ち上げられた。3回目となった今回の打ち上げは、宇宙で動作する実用衛星を積んで出発する初の試みであり、ヌリ号の技術が民間企業に移転される初舞台だ。今後、政府主導を越えて、民間企業による宇宙ビジネスのイノベーション「韓国版ニュー・スペース(New Space)」の時代が到来する。韓国の「宇宙経済」実現に向けた課題を探る。

◇今後続く打ち上げの需要

韓国政府が2030年までに国内民間宇宙企業と連携して発射する予定の人工衛星は、80基以上ある。政府主導で約30年間打ち上げられた人工衛星はまだ29基。年に1度の割合だったが、ヌリ号(KSLV-II)の3回目の打ち上げを機に年平均10回以上に増える。

科学技術情報通信省によると、ヌリ号は宇宙で動く実用衛星8基を搭載して飛んだ。今後は、4回目(2025年)・5回目(2026年)・6回目(2027年)の打ち上げで多数の実用衛星を積んで飛行する予定だ。人工衛星の需要は2025年から急増し、担当する民間企業の役割も大きくなる。

まず科学技術情報通信省は2027年までに「超小型衛星群集システム開発事業」に計2314億ウォン(約250億円)を投入し、衛星11基を打ち上げる。開発主体は、衛星システムの民間企業「セトレックアイ(Satrec Initiative)」だ。海外発射体で衛星1基を飛ばして検証し、ヌリ号の5~6回の打ち上げに5基ずつ乗せて打ち上げることにした。

また、科学技術情報通信省・国防省・防衛事業庁・海洋警察庁などが2030年までに計1兆4223億ウォン(約1532億円)を投入し、「超小型衛星体系開発事業」を遂行する。合成開口レーダー(SAR)衛星と電子光学衛星など44基を飛ばし、朝鮮半島全域をリアルタイム監視・観測する。

この事業にも、航空宇宙メーカー「韓国航空宇宙産業(KAI)」と、財閥企業「ハンファグループ」で防衛産業を手掛ける「ハンファシステム」が参加する。両社が検証衛星1基をそれぞれ開発し、競争の結果によって残りの衛星を受注することになる。

このほか、2030年までに多目的実用衛星「アリラン」6号・7号・7A号、静止軌道公共複合通信衛星「千里眼」3号、次世代中型衛星「国土衛星」2号、韓国型衛星航法システム(KPS)など20基以上の衛星が飛ぶ。超小型衛星は設計寿命が3年であり、追加の需要が続く。このほか、民間企業も2030年までに20基前後の衛星打ち上げを検討しており、国内衛星打ち上げは最大100件に迫る見通しだ。

◇前後方産業への波及効果

このように衛星需要が増えれば、衛星・発射体製作に必要な半導体などの製造業はもちろん通信サービスと気候、地形観測など前後方の産業への経済効果も拡大するとみられる。

衛星を輸送する発射体の競争力が高まることも期待される。ヌリ号技術が移転されるハンファエアロスペースや、宇宙発射体スタートアップ「イノスペース」と「ペリジエアロスペース」などが注目されるゆえんだ。

科学技術情報通信省など関係省庁の集計によると、1992年8月から公式発射された人工衛星は29基だ。韓国科学技術院(KAIST)・ソウル大学・延世大学などの学生らが作った「キューブサット(Cube Sat)」(数キログラム程度の小型人工衛星)と企業が作った衛星を含めれば40基を超える。

イ・ジョンホ(李宗昊)科学技術情報通信相は「宇宙経済を実現するためには、初期段階における公共の役割が重要だ。民間が参加できる公共R&D需要の発掘と民間小型発射場構築、公共機関試験施設開放などを通じ、民間主導の宇宙産業が胎動できるよう支援する」と強調した。

◇打ち上げに成功したスタートアップ

国内の民間宇宙産業も拡大している。まだ試験段階ではあるが、宇宙ロケット(発射体)の打ち上げに成功したスタートアップも登場した。こうした宇宙関連のスタートアップが今年から成果を出すようになり、2030年には6420億ドル(約89兆4562億円)まで成長するとされる宇宙産業の一角を占めると期待されている。

ヌリ号に先立ち、韓国の宇宙ロケット発射をリードした企業はイノスペースだ。今年3月、ブラジルのアルカンタラ射場で、独自開発した「HANBIT-TLV」の試験発射に成功した。独自開発した15t級ハイブリッドエンジンを利用した発射体だ。ブラジルの保安要請で、到達高度は公開されなかったが、高度50~100kmの準軌道級の飛行に成功したものと推定される。

イノスペースはHANBIT-TLVの成功をふまえ、来年には高度500kmに50kgの搭載体を載せた「HANBIT-Nano」を試験発射する予定だ。すでに成功した15t級ハイブリッドエンジンが使われるが、2段発射体であるため、段分離、ペアリング技術などが追加開発されなければならない。イノスペースは年内に開発を完了する計画だ。

ペリジエアロスペースも年内の打ち上げを控えている。打ち上げ場所は、韓国・済州(チェジュ)の海だ。同社が打ち上げる発射体は高度500kmに150kgの搭載体を載せることができる「BW-1」だ。

こちらはイノスペースとは異なり、液体燃料を基盤としている。今年、済州で推進する打ち上げは「BW-1」の上段部だ。ペリジエアロスペースは2021年12月、2022年11月の2度にわたり、プロトタイプ(試作モデル)の「BW-0.1」発射にも成功している。

(つづく)

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