2024 年 5月 20日 (月)
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「台湾侵攻説」への深い苦慮 [KWレポート] 新冷戦の海 (2)

(c)MONEYTODAY

韓国が力を入れて向き合ってきたのは、北朝鮮問題だ。だが、ここにきて、韓国に強い懸念を抱かせる問題が台湾有事。米国の前職・現職高官らが「2024~27年による中国の台湾侵攻説」を持ち出したためだ。前回、紹介した韓国海軍艦隊の動きが「北朝鮮核・脅威対応」と考えるのは困難だ。

すでに米国側から、中国をけん制するよう要求されている――こんなシグナルもうかがえる。日米韓の対潜戦訓練区域は、米国の意向が強く反映された結果だ。中国人民解放軍海軍の3大艦隊である北海艦隊と東海艦隊が、太平洋に進出する際の要所であり、中国潜水艦の主な活動区間だからだ。

韓国軍は対潜戦訓練区域の背景について「北朝鮮の水中脅威対応」だと説明する。だが、米国の公式発表は「自由で開かれたインド太平洋支援」と記されているだけ。「北朝鮮」とは明示されていない。

「自由で開かれたインド太平洋」は「力による現状変更」と同様、西側諸国が中国を念頭にした表現だ。韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領がこれに同調したことで、中国側が猛反発した経緯がある。

韓国の外交関係者の間では「米中対立の間に置かれた韓国の立場を中国当局も理解している」という観測があった。だが、米中関係が手に負えないほど硬直すれば、韓国軍も台湾海峡問題などに関連して沈黙を保ちにくくなるだろう。

さらに、ウクライナ侵攻で苦戦するロシア軍まで海洋に注目している。ベラルーシへの戦術核再配置を宣言した直後の3月28日、ロシア軍は極東ウラジオストク沖の日本海で対艦ミサイル演習を実施し、約100キロ先の標的を破壊したと発表している。

◇海軍力「日本の39%」

各国が新冷戦の舞台として海に注目するのは、制海権が国家の生命と直結しているためだ。

韓国は物流の98%を海運に依存している。原油輸入の90%はホルムズ海峡―マラッカ海峡―バシー海峡につながる南方航路に依存している。ところが、2020年の段階で韓国の主要戦闘艦(1000トン級以上)の総トン数は中国の約17%、日本の約39%レベルにとどまり、海軍力は劣勢だ。

一国が海洋に及ぼす影響力を示す表現である「海洋力」の根幹が、経済・外交だけでなく、軍事力に後押しされるべきだという見解もある。海軍力における劣勢は、米中対立に限らず、領有権紛争などで韓国の声が反映されない要因になり得るという懸念だ。

海軍本部企画管理参謀部長と第1艦隊司令官を歴任した海洋大学のチョン・ジョンス招聘教授は「韓国は日米との協力を強化し、軍事協力を増進すべきだ。ただ、そのためには韓国にもある程度の軍事力が必要だ。日本と同程度の比率を維持する必要がある」とみる。竹島など外交的には強硬に対応しながらも「対中国問題は、ともに声を上げるツートラック戦略で進まなければならない」と強調する。

(つづく)

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