2024 年 5月 9日 (木)

[KWレポート] 5.1%の涙 (2)

彼らはなぜ地下鉄を止めたのか

5月3日午前、景福宮駅乗り場で障害者の移動権保障を要求する障害者団体のメンバー©NEWSIS

韓国の障害者団体が2021年12月から地下鉄でデモを続け、社会に残る障害者差別の実態を浮き彫りにしました。韓国の障害者の実情と、彼らが求めるものは何か、探ってみました。(シリーズ2/5)

◇障害者の移動権

韓国の全国障害者差別撤廃連帯(全障連)による出勤途中のデモで、障害者の移動権に対する関心が高まっている。

多くの市民の足を縛ることになるデモに同意できないという世論も相当ある。しかし、この21年間の闘争にもかかわらず、障害者が公共交通機関に乗って移動することが依然として難しいという事実は否定できない。

NEWSISの取材によると、ソウル地下鉄の駅(1~9号線、牛耳線を含む)のエレベーター設置率は93.6%だ。エレベーターのない21駅のうち5駅は年内に完工する予定であり、11駅は2024年完工を目標に今年から工事を始める。しかし、この数値には、地下鉄を利用する障害者が日常的に経験する危険と不便さが反映されていない。

エレベーターが乗り場までつながらない駅や乗り換え区間で、障害者は車椅子リフトに乗らなければならない。リフトは一人で乗ることが難しく、誤作動による転倒事故の危険があり、「殺人機械」とも呼ばれている。1999~2017年、首都圏だけで17件のリフト事故が起き、ほとんどが重傷を負ったり死亡したりした。

地下鉄車両と乗り場間の間隔と段差も問題だ。今年3月、東大入口駅である肢体障害の乗客が足を乗り場の隙間に挟まれる事故が起きたのもこのためだ。都市鉄道建設規則によると、車両と乗り場の間隔が10センチを超える場合、事故防止設備を設置しなければならないが、2004年以前に建てられた駅には、この規定が適用されない。

バス事情はさらに劣悪だ。2020年の国土交通省による調査で、回答した障害者の61%は最も改善が急がれる交通手段としてバスを挙げた。床が低く階段がない低床バスの導入率は27.8%にとどまる。17市・道の中で全国平均にも満たない所が11カ所あり、ソウルを含む6市・道だけが昨年、政府目標値である42%を上回った。

低床バスの数が相対的に多いソウルも10路線のうち2路線の割合で低床バスが1台もない。低床バスを導入しているのは全体運行路線の80.3%にとどまる。車椅子が乗れる市外・高速バスは7台だけ。

昨年に改正された交通弱者法で、市内・コミュニティバスは廃車時に低床バスに交換しなければならないが、市外バスは法の適用対象から除外されている。

4月21日、景福宮駅で「出勤途中の地下鉄に乗る」というデモを展開する障害者団体のメンバー©NEWSIS

◇障害者コールタクシー

公共交通の死角地帯を補完するための障害者コールタクシーは2020年に全国3917台で、障害者150人当り1台以上という法定基準(4694台)に達していない。障害者コールタクシーは地方自治体が運営主体であるため、地域ごとの偏りはバスより大きい。京畿道と慶尚南道は法定台数以上を保有しているが、予算が十分でない地域は普及率を高めるのが容易ではない。

実際の運行率を改善するには、普及台数とともに運転手も増やさなければならない。

現在、ソウル市に登録されている障害者コールタクシーは622台だが、運転手は721人だ。出・退勤時間帯の平均運行台数は約260台だ。24時間体制で全車両が運行されるためには1台当たり2~3人の運転手が必要、というのが現場からの要求だ。しかし、政策は車両台数に集中している。

新政権発足前に政権引き継ぎ委は、障害者の移動権と関連し▽市内バス廃車時の低床バス導入義務付け▽車椅子で乗車可能な高速市外バス導入拡大▽非都市地域での障害者コールタクシーの法定台数引き上げ▽非車椅子障害者バウチャータクシー拡大――などを、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権110大国政課題として提示した。だが、既存政策の二番煎じだとか中身のない対策だという批判が出ている。

新政権が具体的な改善策を明らかにしたのは、障害者コールタクシーだけだ。人事聴聞会の際、チュ・ギョンホ企画財政相候補者(当時)は、障害者コールタクシーに対する国費支援を「推進する」と述べた。現行の補助金法施行令では障害者コールタクシーを補助金支援除外事業と規定している。この改正を示唆したのだ。

全障連は「障害者も移動して教育を受けて労働し、地域社会で一緒に暮らす」ことを要求している。デモのため移動権だけに関心が集中しているが、全障連が増額を促す「障害者権利保障予算」には、生涯教育(138億ウォン)、脱施設(786億ウォン)、活動支援(1兆2000億ウォン)などが網羅されている。

昨年の「障害者経済活動実態調査」によると、韓国で大卒以上は人口の39.7%を占めるが、障害者では14.3%にとどまった。障害者経済活動参加率(37.3%)と雇用率(34.6%)も全体と比べると25ポイントほど低い。障害者世帯の所得は、全世帯平均の74.4%である4557万ウォンだ。

全障連は、企画財政省が2023年度予算に障害者権利予算を反映することを要求し、5月3日にデモを再開した。今回は車椅子から降りた後、はって列車に乗る「五体投地」方式だ。6日からは国防省庁舎のある4号線の三角地駅に場所を移した。

(つづく)

©NEWSIS

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