
「ソウル最後のバラック村」と呼ばれたソウル市蘆原区中渓本洞の「白沙(ペクサ)マウル」が、再開発によって歴史の幕を閉じようとしている。かつての隣人たちは、それぞれの道を歩む前に、最後の別れを交わした。
社会福祉法人「バプサン共同体福祉財団」は12日、白沙マウルの空き地で「白沙マウル、私たちの永遠の故郷」という名のイベントを開催した。「中渓本洞住宅再開発事業」によってバラバラになった住民たちが、白沙マウルとの別れを告げるためのものだ。
すでに転居した人々や、まだマウルに残る住民たち約100人が集まり、最後の挨拶を交わした。
20年以上この地で暮らしたチェ・ヨンムさん(93)は、中折れ帽と黒のスーツ姿で壇上に立ち、「白沙マウルは私にとって第二の故郷だった。別れが本当に辛い」と語り、声を詰まらせた。
20年以上にわたり地域に奉仕してきた「練炭銀行」のホ・ギボク代表は「再開発で村は消えるが、私たちの心の中の故郷は永遠だ」と感謝の意を述べ、涙をハンカチでぬぐう姿も見られた。
白沙マウルは、1967年にこの地域が開発制限区域に指定され、ソウル中心部から立ち退きを余儀なくされた住民たちによって築かれた。2009年に住宅再開発整備区域に指定され、事業が開始されると、昨年3月からソウル住宅都市公社(SH公社)が管理処分計画の認可を受け、住民の移転が本格化した。
すでに大半の住民は移転を終えたが、10日時点でなお20世帯ほどが白沙マウルに残っている。「長年暮らした家を離れることへの未練」と「管理費が発生する賃貸アパートへの転居が負担」という理由からだ。だが、彼らも数カ月以内には移転する見通しだ。
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