
「パラグライダーで空を飛んでいる間、私の心臓は激しく波打っていましたが、トゥブは驚くほど穏やかでした」
ソウル在住のカン・スルギさんは、愛犬の行動教育やドッグフィットネスのトレーナーとして活動している。カンさんにとって、11歳になるオスの愛犬「トゥブ」は、単なるペットの枠を超えた存在だ。共に働き、新たな挑戦を重ね、人生の苦難を共に乗り越えてきた「同僚」であり「無二の親友」でもある。
◇「プロ」と呼ばれた相棒
2人の出会いは11年前にさかのぼる。トゥブは幼い頃に2度も飼い主から見捨てられた過去を持っていた。知人からその境遇を聞いたカンさんは、悩んだ末に家族として迎え入れることを決意した。
成長したトゥブは、カンさんが営む愛犬教育の現場で大活躍するようになる。新しい訓練の手本を見せる「見本犬」や、頼もしい助手として周囲を支えた。人の空気を素早く察知し、初対面の人とも上手に交流する姿から、いつしか周囲には「プロ」と呼ばれるようになった。指示されなくても自らストレッチをして体を伸ばすのが得意技で、いつも周囲を和ませていた。
◇生死の境から奇跡の回復
そんな2人に試練が訪れたのは、数カ月前のことだった。トゥブが原因不明の激しい嘔吐や下痢に見舞われ、胸や腹に水がたまる重篤な状態に陥った。入退院を繰り返し、一時は生死の境をさまよった。
今年2月、カンさんはセカンドオピニオンを求めて地方の動物病院へ転院。そこで「リンパ管拡張症」という難病であることが判明した。カンさんは病院の指示のもと、フードを細かく砕いて与えるなど、徹底した食事管理と懸命な看病を続けた。
その努力が実を結び、トゥブの体調は奇跡的に回復へ向かう。筋肉量が戻り、検査数値も安定。腹水も完全に消えた。
◇信頼がもたらした「奇跡の空」
「元気になった今でなければ、もうチャンスはないかもしれない」
カンさんは、数年前から胸に秘めていた計画を実行に移した。トゥブと一緒にパラグライダーで空を飛ぶことだった。

結果は予想以上だった。大空へ飛び立った瞬間、緊張のあまり大騒ぎするカンさんとは対照的に、腕に抱かれたトゥブの心拍数は全く乱れなかったという。動画を見た人から「怖がらなかったのか」と聞かれると、カンさんは「犬は人間のように『高いから怖い』と先回りして心配しません。何より、トゥブは新しい挑戦が好きな前向きな性格ですから」と笑顔を見せる。
かつてカンさんは周囲に「2度も見捨てられたトゥブは、私に出会えて幸運だった」と冗談めかして話すことがあった。しかし、大病を乗り越え、大空を一緒に舞った今、その思いは変わった。
「幸運だったのは私の方です。私のやりたいことに、ただ信頼だけを寄せて付いてきてくれた。トゥブ、私の元へ来てくれて本当にありがとう」
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