
中国、北朝鮮、韓国を相次いで訪問したシンガポールのバラクリシュナン外相の動きが注目されている。北朝鮮に対しては「対話と交流のチャンネルを開いておくべきだ」と促し、北朝鮮のチェ・ソニ(崔善姫)外相を7月に開かれる多国間会議に招待した。韓国では「非公開」の動きを取り、北朝鮮側と交わした対話の内容をまったく明らかにしなかった。
一部では、中国、北朝鮮、韓国を訪れる異例の動きを見せたバラクリシュナン外相が、北朝鮮と米国の対話に関連して何らかの役割を担っているのではないかとの見方が出ている。
バラクリシュナン外相は訪韓に先立ち、26日に平壌でチェ外相と会談し、27日には北朝鮮の公式序列2位で、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の「秘書室長」とも呼ばれるチョ・ヨンウォン(趙甬元)最高人民会議常任委員長と懇談した。
バラクリシュナン外相は特に、7月末にフィリピンで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)にチェ外相を招待した。米国、中国、日本など主要国の外相がそろって出席するARFは、北朝鮮も正式な参加資格を持つ多国間会議体だが、北朝鮮はトランプ政権1期目だった2019年2月のハノイ米朝首脳会談決裂以降、外相を派遣していない。バラクリシュナン外相が事実上、北朝鮮のARF「復帰」を求めたとの解釈も出ている。
北朝鮮が応じるかどうかはまだ確認されていない。ただ、シンガポール外務省がバラクリシュナン外相によるチェ外相への招待を公式発表し、北朝鮮に「域内国家との交流と対話の扉を開いておくこと」を求めた事実を公開したことについては、北朝鮮側との共感なしには難しいとの見方もある。
実際、北朝鮮の労働新聞は、バラクリシュナン外相がチョ・ヨンウォン氏と会い、「友好的な雰囲気の中で談話した」と友好的に報じた。バラクリシュナン外相の入国、出国まで詳しく伝え、礼遇する姿勢も見せた。
北朝鮮とシンガポールには当面の特別な2国間懸案がないため、バラクリシュナン外相が中国に続いて訪朝した正確な理由はまだ把握されていない。特に2026年のARFはシンガポールではなくフィリピンで開かれるため、バラクリシュナン外相によるチェ外相招待は、2国間懸案の協議以外に別の理由がある異例の動きだとの分析が出ている。
2018年の米朝首脳会談や、2009年の韓国と北朝鮮の「秘密接触」を仲介した外交経験を生かすためではないかとの見方だ。バラクリシュナン氏本人も、2018年6月にシンガポールで開かれた米朝首脳会談で主要な役割を果たした経験がある。
ただ、シンガポールは2027年のARFなどASEAN関連会議を主宰する輪番議長国であるため、今回の「招待」は2026年ではなく2027年の会議を意識したものだとの解釈もある。
バラクリシュナン外相は訪朝直後の27日にソウルに到着し、28日にチョ・ヒョン(趙顕)外相とチョン・ドンヨン(鄭東泳)統一相に会った。韓国外務省は、両外相の会談について「北朝鮮との対話条件を整える方策」などの懸案を協議したと明らかにした。
一方、韓国統一省はチョン・ドンヨン氏とバラクリシュナン外相の面会自体を非公開で進めた。会談場所まで報道陣に知らせない「非公式面会」に近い形だった。
チョン・ドンヨン氏はバラクリシュナン外相と会った直後、記者団と対面した場で「互いに会談内容を公開しないことにした」と極めて慎重な姿勢を見せた。普段、北朝鮮や朝鮮半島関連の懸案について積極的に立場を示してきた姿とは大きく異なっていた。
それでもチョン・ドンヨン氏は「シンガポールの建設的役割について大変ありがたく思う」と述べた。「建設的役割」は、韓国政府が南北または米朝対話をめぐる中国の役割を促す際に使う外交的表現で、チョン・ドンヨン氏の発言をめぐり、バラクリシュナン外相がシンガポールの「仲介者役」に関する立場を伝えたのではないかとの観測も出た。
シンガポールは1975年に北朝鮮と国交を結び、自国内に北朝鮮大使館も置くなど、比較的円満な関係を保っている。シンガポール外務省によると、今回の訪朝もチェ外相の要請に基づくものだという。
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