
韓国の元プロ棋士、イ・セドル九段は、人工知能(AI)の普及によって囲碁界の実力格差がむしろ拡大したと指摘し、同様の現象が社会全体でも進んでいるとの見方を示した。
イ・セドル九段は、韓国情報通信振興協会が開いたフォーラムで講演し、「AIの導入で実力が平均化されると思われていたが、実際には逆で格差がさらに広がった」と述べた。
かつてはAIによって棋力が底上げされ、突出したトップが生まれにくくなると予想されていた。しかし実際には、AIを効果的に活用できる棋士と、そうでない棋士との間で差が大きく開いたという。
イ・セドル九段は「これは囲碁界だけの問題ではない。囲碁はAI時代を約5年早く経験したにすぎず、現在起きている変化は社会や産業全体でも同じように現れている」と強調した。
実際、教育分野でも類似の傾向が指摘されている。AIを「道具」として使いこなす層と、「代替手段」として依存する層との間で、学力格差が拡大しているとの研究もある。
さらにイ・セドル九段は、AI時代においては「物語性」の価値が高まると分析した。AIは人間を上回る計算能力で最善手を導き出す一方、人間の対局にある感情や背景、ドラマ性は持たないためだ。
「どれほどAIが強くても、そこに物語はない。人間の囲碁には個性や感情がある」と述べ、技術だけでは代替できない価値の重要性を指摘した。
また今後は「一つの分野だけに特化した人材はAIに代替されやすい」とし、幅広い知識を持つことの重要性も強調した。「多様な分野を理解してこそAIに適切な問いを投げ、選択肢を広げられる」と述べ、教育制度の見直しの必要性にも言及した。
(c)news1