2026 年 6月 24日 (水)
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韓国で銀行員になった脱北者、「定着」は今も答えのない言葉 [韓国記者コラム]

大学時代、キムチ漬けのボランティア活動に参加したイ・ガンさん=本人提供(c)news1

脱北者を説明する際、最もよく使われる言葉の一つが「定着」だ。しかし、韓国社会で人並み以上の安定した生活を築きながらも、この言葉を前に複雑な胸中を吐露する脱北者がいる。ソウル市内の銀行で企業向け融資などを担当するイ・ガンさん(36)だ。入国から10年が経ち、結婚9年目を迎えた一家の主であり、近く分譲マンションへの入居を控える「予備のマイホームオーナー」でもある。だが、自身を「定着した人」と呼ぶのは難しいという。

平壌には今も、連絡のつかない母親や親戚、友人が残されている。イ・ガンさんにとって脱北は新しい人生の始まりであると同時に、大切な人たちとの生別を意味した。「もともといた囲いの中から自分だけが抜け出したような気がする。大切なものはみんなあそこにあるのに、私だけがここにいる」。イ・ガンさんは自身を、命綱で船体とつながったまま宇宙空間を浮遊する「宇宙飛行士」に例え、故郷に残した家族への思慕を「心の手放せないひも」と表現した。

イ・ガンさんは2021年、韓国・中央大学在学中に脱北者向け枠の採用試験を突破し、約30人の志願者の中からわずか4人の合格者の一人として大手銀行に就職した。現在は一般窓口などの基礎業務を経て多忙な日々を送る。

ただ、これまでの歩みの中で最も困難だったのは、就職でも社会への適応でもなく、中国で虐待され心に深い傷を負った少女(当時9歳)を、家族として迎え入れる過程だったという。

結婚後、イ・ガンさんは妻と共に、中国のある施設にいた女の子を韓国に連れてきた。中国語しかわからなかったその少女は、見知らぬ言語と文化の中に置かれた。

少女が思春期を経て「なぜ私を連れてきたのか」「中国に帰る」と怒り、イ・ガンさんもうつ病になるほど大変だったという。だがイ・ガンさんは「連れてきた選択」を後悔したことはないという。むしろその葛藤と向き合う中で、一人の人生に責任を持つ重さを痛感した。

一方で、イ・ガンさんは大学時代から脱北者の仲間とボランティア団体を立ち上げ、山火事の復旧現場や独居高齢者の支援などに奔走してきた。背景には、韓国社会や国民への純粋な感謝の念がある。過去には、韓国入りを支援してくれた恩人のはずの韓国人事業家に入国直後、定着支援金の一部を騙し取られる苦い経験もした。それでもイ・ガンさんは「良い人にも変な人にも会ったが、結局は人のおかげでここまで来られた」と振り返る。

「経済的には定着したのかもしれないが、心まで定着したかはわからない」。これからの計画について尋ねると、イ・ガンさんは「家族を守るために健康であること」とシンプルに答えた。

心に消えない葛藤を抱えながらも、愛する家族と人々を支えに、イ・ガンさんは今日も韓国社会をひたむきに生きている。【news1 ユ・ミンジュ記者】

(c)news1

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