2024 年 3月 29日 (金)
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過密状態、解消できずに11年間 [KWレポート] 韓国刑務所の“無作為容疑” (1)

(写真=gettyimagesBank)(c)MONEYTODAY

韓国政府が麻薬・株価操作・凶悪・組織犯罪との戦争を宣言したのを機に、過密状態にある刑務所がクローズアップされている。受刑者の人権にかかわる問題であり、早期解消が求められる課題だが、韓国社会のさまざまな壁にぶち当たり、足踏みが続く。

◇「カネを食うカバ」

米連邦刑務所――。

その受刑者数は1980年、2万5000人を下回っていた。それが2010年には21万人、つまり8倍以上になった。

それに伴い、刑務所の管理に投入される費用も600%増加した。

2014年には米法務省予算の4分の1を超える69億ドルが連邦刑務所の関連費用として投入されるほど。

刑務所はいつのまにか「カネを食うカバ」と化した。

米国では1971年、当時のニクソン政権が「麻薬との戦争」を宣言したあと、麻薬犯罪の法定刑が高くなり、長期の受刑者が増えた。

施設の過密化が深刻になり、受刑者らは十分な矯正・教化の機会を得られないまま出所し、再収監される。これが繰り返され、結局、社会安全網は再び危機にさらされることになった。

米国が犯罪予防に焦点を合わせて矯正システムを根本的に変え始めたのは、ニクソンが戦争を宣言してから半世紀近くが過ぎた2018年だった。

◇拘置所で新型コロナ集団感染

韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は「犯罪との戦争」を推進する。ただ、この「戦争」が、米国と同じような道をたどらないか――こんな懸念が出ている。

米国のように、罪を犯した者に対する処罰と隔離だけが強調されてしまわないか。矯正施設が過密になり、それが放置されないか。再教育の機会を遮ってしまい、再犯率が高まってしまわないか。

結局、社会安全網を構築するのに、より多くの費用・時間が必要になってしまう、という流れになってしまう。

韓国法務省によると、今年2月の段階で国内54の矯正施設のうち33カ所(61.1%)で収容定員が超過していることがわかった。

清州(チョンジュ)女子刑務所の場合、定員610人に対し、798人が収監されている。その割合は130.8%だ。一部の6坪余りの収容部屋(生活空間)に定員の約2倍の人員が収監されている。

このほか、昌原(チャンウォン)刑務所は125.2%▽大田(テジョン)刑務所は124.9%▽済州(チェジュ)刑務所は120.4%▽ソウル東部拘置所は118%――などが過密施設として扱われている。

ソウル東部拘置所で2021年、1200人余りが新型コロナで集団感染したのも過密問題と無関係ではない。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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