2024 年 4月 30日 (火)
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[KWレポート] 犯罪者が来たがる不思議な国 (1)

「テラ・ルナ」事件の中心人物、テラフォームラボのクォン・ドヒョン代表(c)AFP/news1

「ルナ(Luna)」と姉妹ステーブルコイン「テラ(Terra)」。一時、時価総額100兆ウォン(約11兆円)まで急騰した韓国産暗号資産(仮想通貨)だが、2022年に暴落し、世界の暗号資産市場を混乱に陥れた。

開発者であり、ブロックチェーン企業「テラフォーム・ラブズ(Terraform Labs)」のクォン・ドヒョン最高経営者(CEO)は暴落直前の同年4月、シンガポールに出国し、姿をくらました。クォン氏は詐欺などの疑惑で訴えられた。

その後、アラブ首長国連邦(UAE)とセルビアを経てモンテネグロに入国したことが確認された。そして昨年3月、偽造旅券でUAEに向かおうとしていたところ、逮捕された。

モンテネグロの裁判所はいったん、クォン氏の米国への送還を決めた。米国証券取引委員会(SEC)やニューヨーク連邦検察が提訴・起訴していたためだ。米国で有罪となれば、量刑が100年以上になる可能性もあった。だが、上級審は「韓国の犯罪人引き渡し米国より先に届いた」という判断から一転、「韓国への引き渡し」とした。

「クォン氏は米国で一生、罰を受けてほしい」。韓国行きの可能性が語られていた今年3月。事件被害者の間ではこんな嘆きが相次いだ。韓国人は韓国で裁判を受けるのが当たり前なのに、皮肉にも被害者は反発した。

韓国では、法感情と判決のギャップを指摘する声は以前からあった。最近は、詐欺やファンド事件のような金融・証券犯罪の判決に対する反発が特に強くなっている。「法感情に反して、処罰が軽くなる傾向があり、金融・証券犯罪は“ぼろ儲けできる商売”だ」という認識すら垣間見える。

実際のところ法律自体は弱いわけではない。それでも判決ではこのような判例はなかなか見当たらない。

その理由は「量刑基準」にある。

◇加重・減軽要素など「採点表」

量刑基準とは、裁判所が刑を宣告するのに参考にするガイドラインを指す。

刑法の傷害罪の場合、7年以下の懲役に処することになっており、宣告できる量刑の幅は非常に広い。同じように人を傷つけたとしても、ある人は懲役1年、別の人は5年となれば、法に対する信頼度が下がるだろう。

このために最高裁は、量刑委員会を通じて傷害の種類に伴う量刑、加重・減軽要素など「採点表」を作った。

これが量刑基準だ。

判決文に登場する「真剣な反省」「犯罪手法が残酷だ」などの字句も、量刑基準に明示された「加重・減軽」要素となっている。

(つづく)

(c)news1

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