
韓国の大手ファッションEC企業「ムシンサ(MUSINSA)」が、過去最高の業績を記録したにもかかわらず「非常経営」体制を宣言し、社内では緊張感が高まっている。中でも注目を集めているのは「成果向上プログラム(PIP)」の導入によって、実質的な構造調整(リストラ)を進めているのではないかという指摘だ。
業界関係者によると、ムシンサは2024年の連結基準で売上高1兆2427億ウォン、営業利益1028億ウォンを記録し、前年よりも売り上げが25.1%増加、営業利益は黒字転換した。2025年上半期の大規模セールでは、わずか70時間で売り上げ1000億ウォンを突破するなど、記録的な興行を見せた。
ただ、今年1〜3月期の取引額が前年同期比で増加したものの、内部目標には届かなかったことを理由に、ムシンサは4月に非常経営を宣言。コスト削減と効率化を強調する姿勢に転じた。
こうした中、社内ではPIP運用が始まり、低評価社員への「指導」が強化されている。PIPは、目標未達の社員に対して具体的なガイドラインを提示し、短期間での成果改善を求める制度であり、実際にはリストラの前段階とみなされることも多い。
匿名掲示板「ブラインド」などオンライン上では「ムシンサの実質的なリストラが始まったのではないか」との投稿が相次ぎ、波紋を呼んでいる。
これに対し、ムシンサ側は「現在、意図的な人員削減はしておらず、その予定もない」とニュースルームで反論したが、社内外の不安は簡単には拭えない状況だ。
ムシンサは規模こそ大きいが、スタートアップ企業として分類されており、大規模な希望退職のような手段ではなく、業務単位での“随時整理”を手掛ける傾向がある。PIPはそのための基準作りと見る向きもある。
ムシンサ関係者は「目標指向型の組織運営の一環であり、社員の成長を支援するプロセスだ」と説明したが、現場では“成果プレッシャー”による退職誘導との見方も依然として根強い。
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