
韓国の学校現場で、保護者や地域住民による過剰な苦情が教育活動を圧迫している。ソウル市教育庁が2025年に国民申聞鼓で受け付けた苦情は、前年比6%増の2万524件となり、初めて2万件を超えた。2024年と比べると27.7%増えた数字だ。電話や訪問で学校や教育庁の担当者に直接寄せられる苦情は含まれていない。
2025年9月、ソウル江東松坡教育支援庁の前には弔花が並んだ。マンション再建築で学齢人口が急増し、近隣の小学校が過密状態になったことに不満を持った住民らが抗議したためだ。マンションのオンラインコミュニティで「ソウル市教育庁、国民申聞鼓、市議や区議の苦情窓口に申し立てるべきだ」との意見が広がり、関連する苦情は短期間で約900件に上った。
ソウル市教育庁の苦情が増えた背景には、誰でも簡単に申し立てできる環境がある。保護者でなくても、マンション価格の下落を懸念した住民が学校配定を問題にし、オンライン上で「苦情爆撃」を呼びかけることができる。運動会の騒音、学校体育館の開放、人工芝設置の要望など、内容も多岐にわたる。最近はAIを使って法律を有利に解釈したり、機械的に苦情を作成したりする事例もあるという。
2024年には、東徳女子大学の事態に関連する集会でソウルの高校生がやじを飛ばしたとして、「民主市民教育や生活指導を徹底してほしい」といった苦情が約3000件殺到した。ソウル市教育庁関係者は「ソウルだけでなく全国各地から関連苦情が寄せられた」と説明している。
教育庁には苦情に応じる義務がある一方、回答を拒む権利はない。韓国の苦情処理法施行令では、特別な理由がない限り一般苦情には7日以内に回答しなければならない。担当奨学官は学校に確認せざるを得ず、教師も対応に時間を割かれる。ソウル市教育庁関係者は「苦情を入れた人が教育共同体の関係者かどうかも分からない状況だ。教育庁と教員が対応に力を使うほど、教育への集中度は下がる」と懸念する。
教育現場が崩壊した代表例として、全北・全州市の小学校が挙げられる。2024年、この小学校では5年生の担任が6回も交代した。保護者2人が「教師が子どもをにらんだ」などとして、児童虐待の通報や苦情を繰り返したためだ。
児童らが6年生になった2025年には、全国教職員労働組合の前全北支部長だったソン・ウクジン氏が志願して担任を務めた。ところが3月の1カ月間だけで、児童虐待の通報は5回、警察の出動は9回、苦情は約40件に達した。「子どもが教師のそばにいることを怖がった」「車内にいた子どもに教師が外から声をかけて怖がらせた」といった理由だったが、ソン教師は全州市の担当部署の調査を受けた。
学校と教育庁は現行法上可能な対応を続けたが、効果は限られた。教権保護委員会は2024年に保護者2人へ特別教育の受講を命じ、2025年には心理治療を命じた。しかし2人はいずれも受けなかった。教育庁は違反回数に応じて最大300万ウォン(約33万円)の過料を科すことができるが、居所不明などで通知手続きにも難航している。
全北教育庁は2024年と2025年、公務執行妨害、虚偽告訴、名誉毀損などの疑いで教育監による刑事告発に踏み切ったが、起訴の可否もまだ結論が出ていない。
教育省は2026年1月、「教員地位法施行令」を改正し、過料を回数に関係なく300万ウォン(約33万円)に引き上げた。重大事案では教権保護委員会が教育監による代理告発を勧告できるようにした。ただ、現場では即時の保護につながりにくいとの指摘が残る。教員団体は、基準が不明確な「情緒的児童虐待」が虚偽性の高い通報につながるとして、関連法の見直しを求めている。
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