
韓国のトスバンクがアップルペイのサービス開始を前に、計画を暫定的に中断した。アップルペイ導入の有力候補とされてきた新韓カードに続き、トスバンクもサービス開始を一時保留したことで、その背景に関心が集まっている。
金融当局と金融圏によると、トスバンクはアップルペイ関連の金融監督院の約款審査を終え、導入を控えていたが、経営上の判断によりサービス開始を見送ったという。
トスバンクは2025年11月、金融監督院にアップルペイ約款審査を申請し、3カ月後の2026年1月に承認を受けていた。
現在、韓国で唯一アップルペイを支援している現代カードの例を見ると、2022年12月に金融監督院の約款審査を終えた後、2023年3月に実際のサービスを始めるまで約3カ月かかった。
しかし、現代カード以降にアップルペイ参入を掲げた金融会社は、最近になって金融監督院の約款審査を通過した後も、相次いでサービス開始を保留している。
現代カードに続くアップルペイ導入の有力候補とされた新韓カードは、2024年12月にすでに約款承認を受けているが、サービス開始は1年以上遅れている。
業界では、アップルペイの競合サービスであるサムスンペイの手数料問題が最も大きな要因だとみている。現代カードがアップルペイを導入した後、金融会社の間でアップルペイ導入の動きが広がると、サムスンペイ側が手数料引き上げの可能性に触れ、けん制に出たとの説明だ。
当初、トスバンクはサムスンペイとの関係で他のカード会社より比較的自由だとみられ、アップルペイ導入への期待が高かった。しかし、内部の利害関係が絡み、結局は暫定中断に至ったと分析されている。トスバンクは独自のチェックカード「トスバンクカード」と、提携クレジットカード(PLCC)である「トスバンク・ハナカード」を運営しており、いずれもハナカードの決済網を使っている。
ある業界関係者は「金融会社が簡単にアップルペイを導入できないのは、やはりサムスンペイ問題が最も大きいだろう」とし、「アップルペイを導入すると表明した後、サムスンペイも手数料を取るとなれば、収益性への打撃が大きく、圧迫を受けざるを得ない」と話した。
現在、韓国の簡便決済市場でサムスンペイを通じた決済規模は無視できない水準だ。韓国銀行とサムスン電子によると、2024年の簡便決済サービス市場の年間決済額は約350兆ウォン(約38兆5000億円)で、このうちサムスンペイを通じた年間決済額は88兆ウォン(約9兆6800億円)に上る。
サムスンペイへの国民の依存度が高いだけに、金融当局も事態を注視している。金融監督院は2026年3月、専業カード会社8社の簡便決済担当者と面会し、「サムスンペイはいまや『公共財』に近い」との立場を示した。
これに関連し、イ・チャンジン金融監督院長も2026年3月の記者懇談会で「サムスンの携帯電話を使う際、サムスンペイは当然入っている基本オプションと考えられている。カード会社関連の手数料が新たに課されれば、消費者に負担が転嫁されるほかない」と述べた。
イ院長は「消費者への費用転嫁に対する懸念をカード業界に伝えた」としながらも、「サムスン電子がどうするかはサムスン電子の判断であり、会社が決めることだ。金融監督院が直接関与することはできない」と付け加えた。
(c)news1