2024 年 5月 20日 (月)
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「王陵の復元」優先で「キム・ヨナ生んだスケート場」撤去は妥当か [韓国記者コラム]

大韓体育会公式ツイッター(c)news1

韓国・泰陵(テルン)国際スケート場が早ければ2027年に撤去される。文定(ムンジョン)王后の墓である泰陵を含む朝鮮王陵40基が2009年にユネスコ世界文化遺産に指定された。その影響で泰陵の横の国家代表選手村は、すでに鎮川(チンチョン)に移った。アイススケート場も代替施設の敷地公募を経て移転する計画だ。

この重要な事実を知っている国民は多くない。幅広い論議を経たのではなく、文化財庁が世界文化遺産の登録申請をする際、「王陵の原型復元」が前提条件のようになったためだ。

ただ、果たして、数百年前に死んだ朝鮮王妃の墓が、泰陵選手村より史料的価値で優位にあるのか……。

「光海君日記」(1611年8月29日付)には、王の頻繁な陵行(墓参り)で民生が苦しく、自制してほしい、という朝鮮王に諫言する「司諫院」の要請があったという。先祖の墓を訪ねることを重要な儒教の礼法としていた朝鮮でも、あえて王の陵行に異議を申し立てることができた。言論の役割をしていた司諫院で、民生を礼法に優先させるよう主張できたのだ。

泰陵スケート場は、キム・ヨナとイ・サンファ、そして数多くの氷上の英雄を生んだ。

第2のキム・ヨナ、イ・サンファを夢見るエリート選手たちだけでなく、スケート好きな子どもたちも、そこで、今も氷上で汗を流す。愛好家の同好会活動も活発だ。首都圏でまともなスケート場は、ここだけだからだ。

韓国の冬季スポーツの象徴であり、近現代史の重要な国家遺産である。世界文化遺産になった王陵も重要だが、スケート競技場は現代を生きる韓国国民の「民生」はもちろん、「自尊心」と関連した重要な資産だ。

スポーツ強国であることを立証しながら、韓国が先進国の仲間入りを果たしたことは否定できない。訪韓観光効果から見ても、数百年前の墓を訪れる人よりは、K-カルチャーの一つであるK-スポーツ遺産を訪れる人の方が多いだろう。

これまで広く論議されることなく、ただ登録に必要だというから当然のように見過ごしてきた。「ユネスコ事大主義」かもしれない。現時点では、王陵を原型保存するのがユネスコの方針に合うため、より価値があるように考えられる。

しかし、数百年の未来を仮定してみよう。

その時、この地の子孫たちが「20世紀の韓国のスポーツ遺産はなぜ残っていないのか」と言ったら、どうするのか。

王と王妃の墓だけが文化遺産ではない。泰陵スケート場と選手村も韓国建立後、我々の誇らしい歴史であり、大きな価値がある重要国家遺産だ。「朝鮮」の痕跡を守ることが「大韓民国」の「現在」と「近現代史」を守ることより優先させることはできない。

私たちは朝鮮ではなく大韓民国に住む。朝鮮の遺産を原形復元するために、現代の施設を壊すことをいつまでするのか。

「ソウル」を「漢陽(ハニャン)」に復元するのでなければ、数百年前の痕跡を探そうと現在をないがしろにする事業の妥当性を疑い、再検討する必要がある。

莫大な税金をかけて撤去し、新たに遠いところに建設するよりも、ユネスコとの協議を通じてスケート場を守るという方向も原点から検討すべきだ。名分と実利の両方を守る方法もあり得る。すでに登録文化財として選手村の建物数棟は申請した。ここにスケート場を追加して生かすことも可能だ。【MONEYTODAY ユ・ドンジュ記者】

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