
韓国のインターネットコミュニティー「日刊ベスト貯蔵所(イルベ)」など、嫌悪や差別を助長するサイトの閉鎖を巡る議論が再燃し、主管機関である放送メディア通信審議委員会の苦悩が深まっている。現行法上、違法な投稿への処分規定は明確なものの、「サイト全体の閉鎖」に関する基準が不透明なためだ。専門家は、実際に閉鎖決定へ導くには、十分な証拠収集と慎重な法理の検討が不可欠だと指摘している。
業界によると、同委員会は2015年にイルベ側と違法投稿削除のための特別な連絡チャンネル(ホットライン)を構築し、10年が経過した現在も運用を続けている。委員会関係者は「イルベ関連の投稿に対する審議申請は継続的に受け付けており、投稿削除などの是正措置を求めれば、運営陣も比較的よく協力している」と話す。
それにもかかわらず、イ・ジェミョン(李在明)大統領がイルベを名指しし、「サイト閉鎖や懲罰的損害賠償、課徴金などを検討しなければならない」と言及した背景には、個別投稿の削除や接続遮断といった事後的な措置だけでは、嫌悪表現の拡散を根本的に防ぎにくいという問題意識がある。実際、イルベは利用規約に第三者への名誉毀損や公序良俗違反に当たる投稿の削除条項を設け、非会員向けの削除要請手続きも案内しているが、プラットフォーム側の自主規制だけでは限界があるとの指摘が絶えなかった。
ただ、現行法上にサイト閉鎖の基準が明文化されていないため、慎重な対応が必要だという声も少なくない。一歩間違えれば「表現の自由」を侵害するとの論争に発展しかねないためだ。李大統領が「厳格な条件のもとで」とただし書きを付けたのも、こうした懸念を意識したものとみられる。
情報通信網法第44条の7は、同委員会が情報通信サービス提供者や掲示板の管理・運営者に対し、違法情報の処理拒否、停止、制限を求めることができると規定している。しかし、これはあくまで個別投稿単位の措置であり、サイト自体の閉鎖基準とみなすのは難しい。2018年のムン・ジェイン(文在寅)政権当時、大統領府がサイト閉鎖の条件として示した「全投稿の70%以上が違法情報であること」という通称「70%ルール」も、法的拘束力のない同委員会内部の指針にとどまっている。
同委員会関係者は「サイト閉鎖の可否は、開設目的や違法投稿の比率などを総合的に判断しなければならない事案で、一律の基準を適用するのは難しい」と明かす。
実務上の難しさも横たわる。イルベの膨大な投稿を全数調査して違法情報の比率を算定すること自体が容易ではない上、嫌悪・差別表現を現行法上の「違法情報」と断定できるかも曖昧だ。現行法が規定する他人の名誉を毀損する情報には「人種、国家、地域、性別、障害などを理由に直接的な暴力・差別を扇動したり、憎悪感を深刻に助長したりする情報」が含まれるものの、具体的な判断指針を欠いている。ある政府関係者は「デジタル性犯罪物とは異なり、嫌悪や差別表現はどこまでを違法情報とみなして制裁できるのか、基準が不明確だ」と漏らす。
嘉泉大のチェ・ギョンジン教授(法学)は「政治的利害関係によってイルベのコンテンツを見る視点が変わり得る上、サイト内には一般の投稿も混在して流通している」と指摘。「表現の自由の侵害を巡る論争に繋がり、行政訴訟や憲法訴願に発展する可能性が極めて高い。放送メディア通信審議委員会が実際に閉鎖に踏み切るには、違法情報の流通比率が相当高いという点を客観的に証明する必要がある」と強調している。
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