2024 年 5月 18日 (土)
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[KWレポート] 韓国スタートアップになぜ外国のお金が殺到するのか(2)

“青田買い”への葛藤

「マーケットカーリー」の公式サイトよりキャプチャー

韓国のスタートアップ企業に、豊富な資金力とネットワークを持つ海外投資家の熱い視線が注がれ、「K-スタートアップのルネッサンス到来」の期待感が、にわかに高まっています。日本よりもマーケットの小さな韓国になぜ、海外投資家が注目するのでしょうか。その理由を探ってみました。(シリーズ2/計4回)

企業規模を問わない。グローバル投資家らによる韓国スタートアップへの最近の投資で、この傾向が目立っている。

成長の軌道に乗り、企業価値が1000億ウォン以上、設立から7年以上――というのがスタートアップに投資するかつての基準だった。だが、最近は設立7年以下の初期段階の企業に対する投資も増えている。

クーパン優雅な兄弟ハイパーコネクトなど、海外からの投資を受けずに韓国資本だけで設立したスタートアップが、相次いで新規株式公開(IPO)やM&A(合併・買収)に成功すると、「栴檀は双葉より芳し」(大成する人は幼少のときから優れているというたとえ)にあるように、この「双葉」の発掘にも力を入れている。

スタートアップのデータ専門会社「ザ・ブイシー」(THE VC)によると、今年10月末まで海外VCは、韓国スタートアップ147件に計4兆9561億ウォンを投資した。これは昨年の年間投資額8718億ウォン(128件)より5.7倍ほど増加した数値だ。初期段階の投資も1506億ウォンと、すでに前年(1419億ウォン)規模を上回っている。

外資系を最も多く誘致しているのは、オンライン宿泊プラットフォーム「ヤノルジャ」だ。日本のソフトバンクの 韓国最大の旅行アプリ。「ヤノルジャ」は「遊ぼう」を意味する。2021年9月には旅行大手ハナツアーと戦略的提携のための覚書を締結し、旅行産業への進出の足掛かりを築いた。2021年には、ソフトバンクグループのビジョン・ファンド2号から約17億ドル規模の投資を誘致した。当初、市場で予想より2倍も多い超大型投資だ。人工知能(AI)外国語教育プラットフォーム「リド」もソフトバンクから1970億ウォン規模の投資を受けた。このほか、食材Eコマース(電子商取引)「マーケットカーリー」、韓国最大の中古品販売サイト「タングンマーケット」なども数百億ウォンから数千億ウォン規模の外資誘致に成功した。

外資系VCは、初期段階のスタートアップにも“攻撃的”に投資している。成長の潜在力さえあれば、業種を問わず資金を投じているのだ。最近の投資も、不動産、ファッション、旅行、ヘルスケア、生活用品、電子商取引など多様だ。

不動産仲介プラットフォーム「ダーウィン仲介」と高齢者対象の訪問療養サービス「韓国シニア研究所」はソフトバンクベンチャーズなどからそれぞれ30億ウォン、110億ウォン規模の投資を受けた。

◇積極姿勢の米シリコンバレーVC

米シリコンバレーを拠点とするVC各社も投資に積極的だ。

ストロングベンチャーズ(Strong Ventures)は今年、サプリメント分析プラットフォーム「Pillyze」と美容・生活用品スタートアップ「シンプリオ(simplyO)」、オンラインアパレル生産ソリューション「ファクトリーユニコーン(Factory Unicorn)」などに投資した。

空間キュレーションのプラットフォームを運営する「デートリップ(daytrip)」やメイクアップコンテンツを基盤としたショッピングプラットフォーム「VALLA」は、グッドウォーターキャピタル(Goodwater Capital)の投資を誘致した期待の星だ。

グッドウォーターキャピタルは、フェイスブック、ツイッターなどに投資したVCだ。 韓国スタートアップではクーパンやタングンマーケットなどに投資した。

ビッグベイソンキャピタル(Big Basin Capital)のユン・ピルグ代表は「最近、クーパンなど成功を収めた投資の事例が出てきて、韓国市場とスタートアップに対する理解度が高まっている。今後も有望な初期段階のスタートアップに対する多様な投資につながるとみられる」と述べた。

業界では外資系が増え、韓国スタートアップの生態系が量的・質的に成長するとみている。特に、海外VCのグローバルネットワークを足がかりに、韓国のスタートアップの海外進出がさらにスピードがでるものと期待している。

こうした状況に対し、韓国で有望と考えられているスタートアップが海外に移る「フリップ」(Flip)や、外資への従属が深刻化するのでは――との懸念が一部に出ている。韓国ユニコーンの大半は、外資が主要株主だ。

韓国のある中堅VC役員は「外国からの投資が増えるため、韓国の投資会社もファンド規模や投資戦略面で変わっていく必要がある。初期段階スタートアップの発掘能力が優れていたり、大規模な資金調達力を備えていたりしてこそ、競争力を持つことができる」と指摘した。

(つづく)

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