コラム
MONEYTODAY記者 チ・ヨンホ
コカ・コーラが先日、韓国で麦茶とトウモロコシ茶の発売を始めた。俳優チョン・ユミをモデルにした「太陽のお茶 やかん茶」だ。グローバル飲料ブランド第1位のコカ・コーラが、お茶の販売を始めたというだけで話題になる一方、日本製品をそのまま持ち込んだという批判も出た。
実際、日本のお茶市場は新型コロナウイルス感染を経て、糖類を含むミルクティー、レモンティーから糖類ゼロの伝統茶に転じていると報じられている。こうしたなかで、日本コカ・コーラが昨年、販売を始めた「やかんの麦茶」は、やかんで沸かした麦茶というレトロな感性で、日本で大ヒットした。韓国で発売された製品にも、日本で販売されたやかんのコンセプトをそのまま取り入れられており、翡翠(ひすい)色のパッケージも似ている。
中国でプーアル茶やウーロン茶が、日本で緑茶がよく飲まれるように、韓国では麦茶が好まれている。やかん茶は、韓国の「伝統茶」が海外で人気を博し、韓国に逆輸入された事例といえる。
コカ・コーラが、日本で人気を集めたやかんのお茶を韓国に持ち込んだということは、それだけ韓国の麦茶市場に注目しているということを示す根拠になっている。
2000年、韓国で初めて麦茶飲料を発売したのはウンジン食品。その「ハヌル麦茶」は20年以上、この分野で首位を走っている。
ハヌル麦茶は当時、家で飲んでいた麦茶を外出先でも飲めるように商品化した初めてのRTD(Ready-to-Drink)製品だった。ところが、発売当初、市場では見向きもされなかった。「家で簡単に沸かして飲める麦茶を、誰がお金を払ってまで飲むんだ」というのが飲料業界の評価だった。
社内での反応も冷たかった。
当時、ウンジン飲料を率いていたチョ・ウンホ氏=現・ハイト眞露(JINRO)飲料代表=が経営陣にハヌル麦茶の試作品を披露すると、経営陣から「『よくやった、よくやった』とほめていたら、余計なことをしてくれた」という言葉まで聞かされたという。
だが、日本の飲料市場が、お茶を商品化して急成長を遂げた事実を知ったウンジン食品は、穀物飲料「アチムヘッサル」、梅ジュース「チョロクメシル」と、穀物や伝統果実を使って飲料市場を拡大する計画を実行した。
ミネラルウォーター市場の競争が本格化した2005年から、売り上げがつられて上がる状況になり、麦茶飲料が消費者に選ばれるようになった。
市場が拡大すると、無関心だった食品・飲料企業も市場に飛び込んできた。
その経緯を見れば、まさに「麦茶市場の挑戦記」と呼べるものだ。
2006年に東西食品が「麦水」を発売し、ロッテ七星飲料も同年に「今日の麦茶」を製造した。両社は2016年と2011年にそれぞれ「マルグンティエン麦茶」と「黄金の麦茶」も発売したが、パッとしなかった。
最近でも韓国コルマがオーナーになったHKイノエン(旧CJヘルスケア)も2015年、「若葉の麦茶」を発売したが、売却問題によって生産中止となり、昨年生産を再開した。
このうち、現在まで生き残った商品は、7%台のシェアを記録している「若葉の麦茶」と、3%台のシェアを持つ「黄金の麦茶」くらい。特に、ロッテ七星飲料は今年、「トハダ麦茶」も発売した。
こうしたなかで2017年にハイト眞露飲料が発売した「ブラック麦茶」は、ハヌル麦茶以降、最も成功した商品に挙げられる。
ブラック麦茶を打ち出した人物は皮肉にも、ウンジン食品からハヌル麦茶を誕生させたチョ・ウンホ氏だ。
ハイト眞露グループが飲料事業を強化するため、2017年に招き入れた。チョ・ウンホ氏は黒麦が一般的な麦に比べて老化防止効果に優れ、食物繊維が豊富である点に着眼し、商品化に挑んだ。その結果、市場シェアを40%まで引き上げることになる。
だが、過度なマーケティングと販売促進費により、収益性が低いという問題も発生している。最近ではこうした活動が停滞し、今年の段階で27%のシェアにとどまり、47%を記録しているハヌル麦茶とは20ポイント差がある。
現在、麦茶市場は前年に比べ10%増加した704億ウォンと、引き続き成長している。なかでもハヌル麦茶の独走状態がさらに強固になっているようだ。
一方、急成長したホッケ茶市場は、新型コロナの影響で飲み会が減ったことで減少傾向が続いている。ホッケ茶を率いる広東製薬は、トウモロコシのひげ茶などを前面に出して「お茶飲料市場」の首位を走っているものの、麦茶分野では力を発揮できていない。広東製薬は最近、麦芽むぎ茶を発売し、新たな挑戦に乗り出している。
飲料業界は麦茶の強みとして「馴染み深い味」を挙げている。性別や年齢、季節にこだわらない特性があり、飲料水として着実に売れているということだ。
最近は、携帯しやすい小・中容量の製品から、家庭で飲める大容量製品に消費比重が移っているという。家庭でミネラルウォーターの代わりに、麦茶を飲むという時代が来るかもしれない。飲料業界の麦茶市場への挑戦記はしばらく続く。
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