
北朝鮮が観光産業を国家レベルの戦略産業と位置づけ、海外からの観光客誘致に向けた大々的な宣伝活動を展開している。元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区などの主要リゾート施設を集中的に紹介するほか、観光当局高官のインタビューや旅行会社の新規設立を公表。国連の経済制裁の影響を受けにくい新たな外貨獲得手段として、また地方経済の活性化の柱として観光業を本格化させる狙いがあるとみられる。
北朝鮮の対外宣伝用月刊誌「錦繍江山(クムスガンサン)」5月号は、紙面の3分の1以上を観光関連の記事と写真に充てた。同誌は、元山葛麻海岸観光地区や三池淵(サムジヨン)観光地区、陽徳(ヤンドク)温泉文化休養地などを重点的に取り上げ、観光インフラ拡充の成果を強調している。
同誌によると、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記は「観光業を地方発展の主要な動力にしなければならない」と直接指示。白頭山(ペクトゥサン)一帯を国際観光の拠点として開発するほか、海岸や山岳の観光資源を積極的に活用するよう求めたという。
同誌には国家観光総局のリ・ジョンヒョク副総局長のインタビューも掲載された。リ氏は白頭山周辺の観光ベルト構想や開城(ケソン)の高麗人参文化観光地などの運営状況を説明した上で、「世界の観光発展の流れに沿った産業計画を科学的に立て、執行していく」と、国際基準を意識した開発姿勢を示した。
特に、2万人の収容能力を持つとされる元山葛麻海岸観光地区については「人々の話題に最も多く上った場所」と言及。東海岸の塩盆津(ヨムブンジン)海岸公園地区の竣工など、開発事業が順調に進んでいることをアピールした。
また、オンラインでの広報も強化されている。公式ウェブサイト「朝鮮観光」は、新たに設立された「光興(クァンフン)国際旅行社」を紹介。羅先(ラソン)地区や七宝山(チルボサン)の観光商品を開発し、輸送手段や案内体制を整えていると宣伝している。
北朝鮮が観光産業の宣伝に注力する背景には、長引く経済制裁下での「外貨獲得」という切実な事情がある。キム総書記は各地の観光地建設現場を相次いで視察し、宿泊や温泉、スキー、海洋観光を組み合わせた複合リゾート化を急がせてきた。これにより、インフラ整備の速度が上がっており、ホテルや休養所の新設・開場が相次いでいる。
対外開放の動きも具体化しつつある。北朝鮮は平壌国際商品展覧会への西側経済使節団の受け入れや、ロシア人観光客の受け入れ再開を進めてきた。今年は元山葛麻海岸観光地区の本格的な開場を控え、海外からの観光客誘致をさらに拡大させるとみられる。
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