
北朝鮮が原子力潜水艦や新型駆逐艦の建造に拍車をかける「海軍現代化」の目標を、沿岸ではなく近海まで活動範囲を広げる「グリーンウォーター・ネイビー(近海海軍)」に置いている可能性が指摘されている。周辺国の海上交通路(SLOC)付近を統制したり、北方限界線(NLL)で存在感を誇示したりして、海上での影響力拡大を狙っているとの分析だ。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)が22日に発刊した朝鮮半島情勢分析報告書によると、北朝鮮が2026年初め、国連傘下の国際海事機関(IMO)に5000トン級新型駆逐艦「崔賢」を保有軍艦として初めて登録したことは、国際海域を通る長距離航海を念頭に置いた信号とみられる。
これは、北朝鮮が12日に崔賢で実施した戦略巡航ミサイルと艦対艦ミサイルの試験発射を公開したこととも重なる。北朝鮮が沿岸から近海へ作戦範囲を広げようとしている動きと理解できる。
ISWの公開映像分析によると、崔賢はロシア製Kh35対艦ミサイルの改良型を、通常ミサイル発射に使う垂直発射システム(VLS)ではなく、別の箱型発射台から発射した。これを根拠にISWは、崔賢が今後、水上戦ではなく長距離核打撃プラットフォームとして運用される可能性が高いと推定した。
崔賢は北朝鮮が海軍力強化のために建造している5000トン級以上の大型駆逐艦だ。4面固定型フェーズドアレイレーダーを搭載し、360度全方位監視が可能な「北朝鮮版イージス艦」とも呼ばれる。127ミリ艦砲1門、短距離対空ミサイル、対艦ミサイル、新型近接防御兵器システムなどを備える。現在は2番艦「姜健」まで進水しており、北朝鮮は3、4番艦の建造も準備している。
ISWは、北朝鮮が崔賢をはじめ駆逐艦や護衛艦など海上戦力の補強に力を入れ、隣接海域での長距離核打撃能力を強めていると評価した。キム・ジョンウン(金正恩)総書記は2030年まで毎年2隻の駆逐艦を建造し、計12隻を確保することを目標にしている。清津(チョンジン)造船所の海軍施設拡張などから、護衛艦建造も進めている可能性があるとみられる。
これまで北朝鮮海軍が沿岸防衛を目標に小型戦闘艦や哨戒艦、潜水艦を主に運用してきたとすれば、今後は周辺国の海洋安全保障活動に影響を与え得る近海まで影響力を広げようとしていることを意味する。
北朝鮮は崔賢の進水を通じて「遠洋作戦艦隊」という方向性を示し、最終目標が「ブルーウォーター・ネイビー(外洋海軍)」である可能性も示唆した。ただ、技術力などの現実的限界から、近海周辺へ段階的に範囲を広げ、実利を取っているとの分析だ。
ISWは、こうした試みの背景にNLL無力化と海上交通路への統制意図が隠れているとみている。北朝鮮はNLLについて、国連軍司令部が一方的に設定した仮想の線で国際法に反すると主張し、海上境界線として認めていない。
ISWは「北朝鮮が望む水準の艦隊を整えれば、キム・ジョンウン総書記が黄海NLLでより攻勢的な主導権争いを展開できるようになる」とし、「北朝鮮は韓国側海域で持続的に存在感を示し、NLLの正当性に絶えず異議を唱える方式を取るとみられる」と指摘した。
さらにISWは、北朝鮮が海上作戦範囲を広げることで、日本や韓国など周辺国の海上交通路をかく乱したり、ロシアや北朝鮮との交易確保を追求して存在感を誇示したりする意図があると推定した。
北朝鮮海軍が単一艦艇ではなく艦隊単位で動き、NLL周辺で存在感を示し、長距離核プラットフォームを本格運用するようになれば、韓国と米国にとっても海上での監視・偵察と対応能力を分散せざるを得ず、対応は一段と難しくなりそうだ。
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