2026 年 4月 21日 (火)
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[KWレポート] 日韓ビジネス仕事人(1) 「恐れず挑戦せよ——すべては貧しさから始まった」

「In Style Japan」のソ・スンフン代表(c)KOREA WAVE

音楽・コスメ・食といったライフスタイルの共鳴により、日韓の心理的ハードルは低くなった。だが、ビジネスの現場に目を向ければ、言葉や商習慣の違いゆえの「透明な隔たり」が、依然として横たわっている。「日韓ビジネス仕事人」では、両国の架け橋を担うフロントランナーたちに光を当て、彼らの葛藤と突破のプロセスを描き出す。【KOREA WAVE編集部 生島マキ】

東京・新大久保に本店を置く「MACAPRESSO(マカプレッソ)」は、韓国式マカロン「トゥンカロン」の専門カフェだ。14種類以上のマカロンを揃え、シーズンごとに新メニューを打ち出すことで、新しさと選ぶ楽しさを更新し続けてきた。なかでも、2023年夏に発売された「ドバイもちクッキー」は、いまなおSNSを中心に熱狂的な支持を集めている。韓国発のトレンドを、日本の感性に落とし込みながら広げてきた「MACAPRESSO」の裏側には、どのような戦略と哲学があるのか。「MACAPRESSO」の運営企業「In Style Japan」のソ・スンフン(徐丞葷)代表に話を聞いた。

ドバイもちクッキー(c)KOREA WAVE

ソ・スンフン代表は韓国出身。日韓のカルチャーとビジネスを横断するビジネスマンで、マカロンの卸売やOEM生産、韓国スイーツのプロデュースなどを幅広く展開している。韓国発トレンドを日本市場にローカライズしながら発信し、数々のヒットを生み出している。

――ソ・スンフンさんのご自身の原点について教えてください。現在のビジネスにつながる背景には、どのような経験があったのでしょうか。

「実は小さい頃は家庭がとても貧しくて、将来は成功してお金を儲けたいという気持ちが強かったんです。その思いのまま入隊した軍隊生活で、私は人生の転換点を迎えることになりました。軍服務中に、経済、マーケティング、成功神話などの専門書を100冊以上読みました。特に成功者の自叙伝を読み込み、彼らの思考回路を自分に刻み込もうと必死でした。かつて世界的に大ヒットした名著『金持ち父さん貧乏父さん』にも感化され、商売をやるしかない!と考えるようになりました。最初は知識を得るためでしたが、ある時気づいたのです。成功した人々はみな、結局は同じことを語っています。“恐れずに挑戦し、最後まで行動し、前進せよ”——単純ながらも強力なフレーズ。あの時期の読書が、私のビジネスにおける最も堅固な理論的土台であり、精神的資産になっています」

――大ヒットしている「ドバイもちクッキー」は、マカプレッソ発信のスイーツだとか。しかも、日本に初めて持ち込んだのもスンフンさん発信だということですが、その背景を教えてください。

「数百回に及ぶ試行錯誤の末に誕生したのが、『ドバイもちクッキー』です。韓国ではドバイチョコレートが流行していたのですが、弊社の社員がそれをアレンジして作ったのが、この商品です。ドバイチョコレートは、チョコレートの中にピスタチオペーストとバターで炒めた“カダイフ(極細麺)”を詰め込んだ、特徴的な食感が魅力です」

「アレンジにあたっての最大の課題は、このカダイフでした。カダイフのサクサクとした食感を維持しながら、日本人が好む“もちもち”感——これを一つのクッキーの中に収めるにはどうしたらよいのか。サクサク感が強すぎるとお餅が隠れてしまうし、お餅が強調されすぎるとカダイフの魅力が消えてしまう。この“黄金バランス”を見つけるために、昼夜を問わず材料の調達と配合を研究しました。その結果、“中はサクッと、外はもちもち”という現在のクッキーが誕生しました。単なるトレンド商品ではなく、私たち独自の技術と真心を込めた“作品”だと考えています」

――ソ・スンフンさんのビジネスの原点から、どのような戦略を描いてきたのでしょうか。

「私は単にスイーツを売るのではなく、“日本の中の小さな韓国”を作ることを目標として考えています。現在はデザート専門ブランドを中心に、韓国で最もホットなトレンドをリアルタイムで日本に紹介していますが、私のビジョンはそれだけではなく、新大久保というコリアンタウンをさらに活性化させたいということです。日本のみんながわざわざ韓国に行かなくても、ここで韓国の味や感性、そして最新のトレンドをそのまま体験できる“体験型文化空間”を創り出したいと考えています。韓国のエネルギッシュな流行を、日本の洗練された市場に移植し、新大久保を単なる観光地ではなく、日韓文化が最も熱く交差する中心地へと成長させたいのです」

――なぜ日本だったのでしょうか?

「日本は地理的に近いということもありますが、以前から“いい商品が多い国”だと感じていました。韓国でウォークマンが流行った時にも、“こんなにすごいものを作るんだ”と驚きましたし、アニメなどの文化も好きでした。日本で良いものを買って韓国で売れば売れるのではないか。そう考えたのが、2011年頃です」

――日韓でトレンドの性質に違いは多少ありそうですが、それをどのようにビジネスに活かしていますか。

「韓国はトレンドの変化が非常に速く、爆発力があります。一方、日本は比較的変化が緩やかですが、持続性があると感じています。そのため、韓国の最新トレンドをいち早く取り入れつつも、日本市場では一過性で終わらせないよう、ブランドのストーリー性を強化する戦略をとっています」

――日本市場において、想定外だった出来事やターニングポイントはありましたか。

「予想外だったのは、日本のSNSやカスタマーレビューの文化です。想像以上に丁寧で真剣なフィードバックをいただけることに驚きました。それらを積極的に商品改善に反映させたことが、ロイヤルカスタマーを増やす決定的なターニングポイントになったと感じています。お客様との信頼関係が築けたことで、広告費を抑えても売り上げが安定するようになりました」

「In Style Japan」のソ・スンフン代表(c)KOREA WAVE

――これまでのキャリアの中で、危機や失敗はあったのでしょうか?

「挫折はあります。韓国でいろいろなことに挑戦してきましたが、工場をつぶしたこともあります。27歳の時で、24歳のころから始めた事業がその時になくなりました。またやり直せばいいと思いながらも、『これからまたできるのだろうか』と落ち込んだ時期もありました。その時はタバコも1日2箱、3箱と吸ってしまい、体を壊したこともあります。今振り返れば大きなことではありませんが、当時は本当に大変でした」

「ただ、ビジネスを続けていれば、予期せぬ危機や挫折は必ず訪れます。そんな時、軍隊時代に読んだ本の内容が、不思議と“本能的な判断力”として湧き上がってきて、それが危機管理の指針にもなりました。『諦めずに行動すれば道は開ける』という確信があったからこそ、今の自分があるのだと思います。今、困難の中にいる経営者の方々にお伝えしたいのは、どれほど苦しい瞬間も、いつかは過ぎ去るということです。当時は絶望に感じても、乗り越えた先には『あんなこともあった』と話せる日が必ず来ます。もちろん、今だって試練はあります。それもきっと自分の糧になるはずだと思って進んでいます」

(c)KOREA WAVE

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