2024 年 5月 5日 (日)
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韓国政府とソウル市が激しく対立…「高齢者の地下鉄無料」どっちが赤字補てん

ソウル地下鉄で改札を通る市民ら(c)news1

韓国では65歳以上の高齢者が地下鉄に無料で乗車できる。だがこの国の制度によってソウル交通公社は赤字が深刻化している。無料乗車の費用負担を、韓国政府とソウル市のどちらが負担すべきか――この問題で両者が激しく対立している。

◇「無料乗車は国の福祉政策」

「ソウル地下鉄には無料乗車に伴う1兆ウォン(1ウォン=約0.1円)台の赤字がある。政府も分担すべきだ」。ソウル市のオ・セフン(呉世勲)市長は1月31日、自身のフェイスブックにこう書き込んだ。今月3日にも「無料乗車制度は国の福祉政策として決定・推進されてきた。企画財政省が傍観するものではない」という趣旨の投稿をした。

与党「国民の力」のチュ・ホヨン(朱豪英)院内代表も3日、記者団に対し「自治体が年に数千億ウォンの赤字を負担しながら継続させるのは正しくないという認識はある。(無料乗車の)年齢の引き上げや赤字負担をどうするか議論する」と述べた。

野党「共に民主党」のイ・ヘシク議員が代表となって発議した「公共交通の育成や利用促進に関する改正法律案」では、今後5年間、65歳以上の高齢者と障害者の無料乗車を継続するには4兆1680億ウォンの費用が必要という。

高齢化に伴って費用は毎年増加し、2024年から28年まで年平均8336億ウォンの財政が必要になる。国家有功者の無料乗車費まで支援すれば、必要な財政は年平均8554億ウォンに増える。

この費用を、いったい、どこが負担するのか。ソウル市は「制度を導入した韓国政府に責任がある」という立場だ。一方の政府は「支援の根拠がないうえ、ソウル市の赤字だけを補てんすると他自治体との公平性を保てない」と難色を示している。

◇韓国鉄道公社には既に支援

政府は既に、全国の広域鉄道を運営する韓国鉄道公社には無料乗車による損失費用を支援している。さらに自治体が運営する地域鉄道の赤字まで国家財政で補てんすれば、結局、国民の税負担につながりかねない。「十分な根拠もないまま、政府資金で地方自治体を支援すれば、ポピュリズムになりかねない」(政府高官)という懸念もある。

韓国では最近、無料乗車年齢を満70歳以上に引き上げる案なども取り上げられており、ソウル市の赤字負担をめぐる議論はさらに活発化する見通しだ。

こうしたなか、専門家には、たとえ政府が赤字の一定部分を支援するとしても、その比率は制限すべきだとの意見がある。財政が専門のソウル市立大学税務学科のキム・ウチョル教授は次のようにくぎを刺す。

「ソウル地下鉄はソウル市民が利用するサービスなので、市と市民が負担するのが原則だ。ただ制度を導入した政府も補助的な役割を果たす必要はある。だが補助は(赤字額の)20%台を超えないことが望ましい」

(c)news1

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