
韓国慶尚南道昌寧のあるニンニク畑で見た「未来農業」は、思ったより近くまで来ていた。人工知能(AI)トラクターと自律走行運搬ロボットRT100が田畑やハウスを行き来しながら農作業をし、農民はスマートフォンアプリで作業を指定するだけという光景は、「農業版テスラ」という別名にふさわしいものだった。
問題は、技術の進化を支える法律、制度、保険、教育インフラが、まだ初期段階にとどまっている点だ。
これまで韓国政府の農機械政策は、機械の普及、補助金、老朽装備の交換に焦点を合わせてきた。その結果、機械の性能は世界水準に近づいたが、自律走行・AI農業機械がもたらす安全、責任、データの問題を包括する制度設計には、事実上まだ十分に手が付けられていない。
特に現行の農業機械化促進法には、知能型農業ロボットの定義や支援規定がなく、AIトラクターと農業ロボットは「制度の外にある装備」として扱われてきた。
大同が農林畜産食品省と国会に対し、農業機械化促進法の改正を求めてきた理由もここにある。最近、イ・ウォンテク議員が代表発議した改正案は、AI・自律走行機能を備えた知能型農業ロボットの概念を法律に明記し、国や自治体が購入・設置費用を支援できる根拠を盛り込んだ。
自律走行・ロボット装備に対する融資や補助比率を高める案も議論されているが、安全基準、データ活用、事故責任の範囲などをどう規定するかは、ようやく出発点に立ったところだ。
高齢化と慢性的な人手不足に苦しむ農村で、AIフィールドロボットは有力な解決策であることは確かだ。しかし、個別企業の商用化努力だけでは、小規模農家のリスク負担、事故責任の問題、保険の死角地帯を同時に減らすことは難しい。
幸い、政府も官民合同の特別目的法人を通じ、国家農業AX(人工知能転換)プラットフォーム事業を進めている。事業は公共最大49%、民間51%以上の持ち分構造で設計され、民間の専門性を生かす構想が盛り込まれた。今後5年間で公共出資最大1400億ウォン(約154億円)を含め、総額2900億ウォン(約319億円)以上が投入される予定だ。
事業の枠組みの中に、AI農業機械専用保険、運用ガイドライン、安全教育、事故データの収集・分析システムを一度に盛り込めるかがカギとなる。理想的な形は、先導地区を指定して一定期間の実証を進め、そこで蓄積された事故、故障、使用パターンのデータを基にシステムを精密に調整していく方式とみられる。【news1 キム・ミンソク記者】
(c)news1