2026 年 5月 9日 (土)
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「金正恩総書記が不在でも核は放たれる」北朝鮮が憲法に刻んだ“自動報復”…韓国で分析

キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記=労働新聞(c)news1

北朝鮮が核兵器使用の条件と権限を初めて憲法に明記した。特にキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の有事など、非常時に核使用権限を別の指揮機構へ委任できるよう規定し、「最高指導者が不在でも核報復は可能だ」というメッセージを発信したとの分析が提起されている。

北朝鮮は3月の最高人民会議第15期初会議で改正した憲法第89条に「朝鮮民主主義人民共和国の核戦力に対する指揮権は国務委員長にある」と規定した。続いて「国務委員長は国家核戦力指揮機構に核戦力使用権限を委任できる」と明記した。北朝鮮の国務委員会は、韓国でいえば大統領府と行政府の役割を担う国政運営機構で、キム総書記が国務委員長を兼ねている。

既存の核保有国も軍統帥権者の核使用決定権限を保障しているが、北朝鮮のようにこれを憲法条項として明文化する例は異例だと評価される。

独裁国家である北朝鮮が最高指導者の核指揮権を憲法に明記したのは、核を体制存立の根拠であり国家のアイデンティティーとして浮き彫りにする意図が反映されたものだとの解釈が出ている。今回の改憲を通じて「核=キム・ジョンウン体制」という構図を定立したとの分析だ。

では、キム総書記に万一のことがあった場合、北朝鮮の核兵器使用は不可能になるのか。結論から言えば、そうではない。

北朝鮮はすでに2022年9月に制定した核戦力政策法で、最高指導者と指導部に意思決定能力がない状況で核兵器使用が必要な場合、自動的に核反撃を実施するよう規定している。

同法第3条「核戦力に対する指揮統制」の3項には「国家核戦力に対する指揮統制体系が敵対勢力の攻撃で危険にさらされる場合、事前に決定された作戦方案に従い、挑発の原点と指揮部をはじめとする敵対勢力を壊滅させるための核攻撃が自動的かつ即時に断行される」と明記されている。

今回の改正憲法に核関連内容が盛り込まれたのは、核戦力政策法の趣旨と精神を強調するものと見ることができる。そのため、憲法改正とは別に、北朝鮮はすでにキム総書記の有事に備えた独自の対応策を用意していたことになる。

北朝鮮は2023年、「核の引き金」という名称の核兵器作動体系を整えたと主張したことがある。これは核兵器の管理から使用作戦の策定までを想定して開発されたものとみられる。核兵器使用の警報発令段階から、指導部の議論、キム総書記の命令伝達、核兵器発射に向けた各状況別の判断基準と全過程を体系化したシステムと推定される。

核戦力政策法には、国務委員長が任命するメンバーで構成された「核戦力指揮機構」が、核兵器使用に向けたすべての過程を補佐するとされている。これは非常時に核戦力指揮機構がキム総書記に代わって核兵器使用命令を下す主体になり得ることを示唆している。今回の改正憲法にも、北朝鮮は「国務委員長は国家核戦力指揮機構に核戦力使用権限を委任できる」と明記した。ただし、核戦力指揮機構の構成員など実体はまだ具体的に明らかになっていない。

こうした北朝鮮の核兵器使用条件と権限の設定は、いわゆる「斬首作戦」など北朝鮮の最高指導部を狙った暗殺作戦が実行されても「核反撃」が可能だと強調し、外部の脅威に対する抑止力を確保する構想とみられる。「キム・ジョンウン氏が死亡しても核兵器は作動する」というメッセージにより、先制攻撃を防ぐ意図があるということだ。

これはトランプ政権とイランの対立を見て得た「反面教師」かもしれない。実際、トランプ大統領は1期目と異なり、2期目にはイランの核施設を攻撃し、ハメネイ師と指導部の相当数を排除する強硬策でイランの「壊滅」を試みた。

ただ、実際にキム総書記が死亡するような状況になった場合、北朝鮮の核反撃システムが正常に作動するかは未知数だ。北朝鮮指導部への「斬首作戦」が実施される場合、キム総書記だけでなく、広範囲の北朝鮮指導部の意思決定能力を無力化する方法が動員される可能性があるためだ。すでに韓米の監視網が北朝鮮の核・ミサイル施設の大半を監視しているとの見方もある。

北朝鮮もこれを意識し、「国家核戦力指揮機構」の構成員などを徹底して秘密にしているとの分析もある。非常時の「反撃の最後の砦」が国家核戦力指揮機構になり得るからだ。

専門家らは、北朝鮮が核兵器使用権限をキム総書記に極端に集中させながら、同時にキム総書記なしでも核使用が可能だという論理を導入した点には矛盾する側面があると指摘する。

韓国国防研究院のシン・スンギ研究委員は「キム・ジョンウン氏の有事にも核報復が可能だという認識を植え付け、韓米の斬首作戦を抑止しようとする目的が大きい。緊迫した非常時に核統制権の空白を防ぐための内部管理上の悩みも反映されたとみられる」と述べた。

梨花女子大学北朝鮮学科のパク・ウォンゴン教授は「北朝鮮はキム・ジョンウン氏の有事でも核戦争が可能だという恐怖を植え付けようとしているが、実際の核使用決定は容易ではない。核兵器を使用する瞬間、北朝鮮体制も致命的な報復に直面するためだ」と指摘する。

(c)news1

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