2024 年 5月 9日 (木)
ホーム特集KW レポート 私の赤ちゃん、育てない権利 (1)

[KWレポート] 私の赤ちゃん、育てない権利 (1)

児童保護体系改善対策民政協議会で冒頭発言をするチョ・ギュホン保健福祉相=2023年6月28日(c)news1

韓国で来年、「出生通報制」が導入される。病院で赤ちゃんを産むと、出産した女性の名前がすべて残ることになる。一方で、望まない子どもを産まなければならない人々もいて、名前を残さないとする「保護出産制」導入の議論もある。自由と責任をどう考えるのか、命のかかわる重大なジレンマだ。

◇出生通報制法

韓国で来年7月以降、病院で赤ちゃんを産む場合は、親が出生届を出さなくても自動的に政府に通報されることになる。6月30日に国会を通過した「出生通報制法」のためだ。昨年までの8年間、出生届が出ていない乳幼児が2236人に達するという監査院の発表があり、これが法案論議に火をつけた。

一方で、同時に扱われた「保護出産制」導入法案は処理されなかった。未婚、未成年などさまざまな理由で出産の事実を隠したい女性たちが、匿名で、病院で子どもを産むことができるようにする内容だ。だが捨てられる赤ちゃんが増える可能性があるほか、児童の「親を知る権利」を奪うなどの理由で野党が慎重論を展開している。

専門家は、シングルマザーへの支援強化、堕胎罪代替立法も含め、「望まない出産」問題の解決策を探すべきだと指摘する。

◇国会で保留

政界関係者によると、与党「国民の力」のキム・ミエ議員が代表発議した「保護出産に関する特別法案」と、野党「共に民主党」のチョ・オソプ議員が代表発議した「危機的妊産婦および児童の保護・支援に関する特別法案」などの一連の保護出産制導入法案が、国会保健福祉委員会で保留となっている。

このまま1年後に出生通知制が施行されれば、やむを得ない事情で育児を避けたい一部の女性が、病院外での出産を試みる可能性も排除できない。このため、与野党は保護出産制法案を早急に審議するとしたが、野党内の一部反対意見のため、迅速な処理は進みそうにない。

◇抜け落ちる「シングルマザー」支援策

専門家は、保護出産制を導入するかをめぐる論争だけでは、根本的な解決策を見いだせないとし、より包括的な議論を求めている。

崇実(スンシル)大学社会福祉学科のノ・ヘリョン教授は「国会での議論は、出生届制を施行すれば病院外での出産が多くなるおそれがあり、できるだけ早期に立法すべきだとなっている。だが、急がなければならない理由がわからない」と指摘する。

その議論からは、子どもを育てたいのに経済状況や周囲の偏見などでそれができないというシングルマザーのための支援策が抜けている――ノ・ヘリョン氏はこう指摘しつつ、次のように問題提起した。

「望まない妊娠だったとしても、子どもを産んで自ら育てたいと思う人たちはとても多い。未婚の母に対する社会福祉が足踏み状態だ。保護出産制だけを性急に施行すれば、むしろ未婚の母たちに匿名出産を社会が勧めるという副作用が起きかねない」

(つづく)

(c)MONEYTODAY

RELATED ARTICLES

Most Popular