
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記が最近、重要軍需工業企業所を視察し、今年上半期の砲弾生産の実態と能力拡張・近代化の進捗状況を確認した。北朝鮮国営メディアはこの際、それまでぼかし処理を施していた工場関係者の顔をすべて公開した。
米国の北朝鮮核専門家であるジェフリー・ルイス氏(ジェームズ・マーティン不拡散研究センター)は、今回公開された写真を分析し、キム総書記が視察した工場が2016年、2023年、2024年に訪問した軍需工場と同一である可能性が高いと指摘した。
2023年と2024年に北朝鮮が同工場を「超大型多連装ロケット砲弾生産工場」「重要軍需工場」と位置付け、兵器製造拠点であることを公式化したにもかかわらず、当時は関係者の顔は公開されなかった。これはロシアへの武器輸出とそれに伴う国際制裁を意識した対応とみられていた。
しかし今年の報道では、工場関係者の顔を含めてすべて公開された。背景には、北朝鮮とロシアが昨年6月に事実上の軍事同盟を締結し、今年4月に北朝鮮軍のロシア派兵を公式に認めたことによる姿勢の転換があると分析されている。
北朝鮮はその後、「派兵は国際法に則った正当な行為」と繰り返し主張し、ロシアのプーチン大統領が北朝鮮軍の派兵を高く評価したという発言を、国内向けの党機関紙・労働新聞に掲載した。さらに、5月9日にモスクワで開かれた戦勝記念日の軍事パレードに出席した北朝鮮将官の写真まで公開している。
こうした流れの中で、ロシアに武器を供給する軍需工場の関係者を“成果を挙げた人物”として前面に出すことで、北朝鮮が「正々堂々と行動している」点を国内外に誇示する意図があるとみられる。
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