北朝鮮がロシアへの派兵を公式には認めない中、派兵された兵士の戦死に関する情報が外部から流入しているとの見方が出ている。北朝鮮当局は、こうした情報が住民に影響を及ぼすのを懸念し、米国や西側諸国による「虚偽情報の拡散」を非難する姿勢を強めている。
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は8日、「覇権維持を狙った卑劣な虚偽情報の拡散工作」という記事を掲載し、「反帝自主的な国家を瓦解させるための米国と西側勢力の世論操作や虚偽情報の拡散が一層悪辣になっている」と主張した。記事では、イランを例に挙げながら、米国と西側が経済的圧力と虚偽情報を駆使して内部不安定を誘発し、体制転覆を図っていると批判した。
さらに、虚偽情報が「反帝自主勢力を分裂・瓦解させるための主要な手段として、より集中的に展開されている」と述べた。
これらの主張は、ロシアに派兵された北朝鮮軍兵士の動向が国際的に報じられている状況と無関係ではないと見られる。派兵当初は具体的な情報が少なかったが、兵士の遺留品や、北朝鮮兵士がウクライナのドローンにより攻撃される映像などが公開されるにつれ、現地での北朝鮮軍の存在が明らかになりつつある。
北朝鮮当局は、こうした情報が住民に広がり心理的動揺を引き起こすことを懸念し、情報統制の一環として今回の記事を発表した可能性が高い。
北朝鮮は昨年10月からロシア・クルスク州に1万人以上の兵士を派遣したとされるが、これについて国内では一切説明していない。この沈黙の裏側には、情報流出を防ぎつつ、住民の体制への動揺を最小限に留めたいという思惑が見え隠れしている。
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