2026 年 5月 19日 (火)
ホーム社会「初犯が4割超」の衝撃…繰り返される無差別凶悪犯罪の死角

「初犯が4割超」の衝撃…繰り返される無差別凶悪犯罪の死角 [韓国記者コラム]

殺人などの疑いが持たれているチャン・ユンギ容疑者(23)(c)NEWSIS

韓国・光州の都心で最近、面識のない女子高校生が刃物で殺害された事件をきっかけに、不特定多数を狙う無差別凶悪犯罪への恐怖が再び高まっている。

捜査の結果、今回の事件は特定の女性を狙った後に犯行対象を変えた憤怒犯罪であり、計画犯罪だったことが分かった。ただ、犯行前の危険信号が制度の枠内で捉えられていたにもかかわらず、実質的な予防につながらなかった点で、管理体制の穴を露呈したとの指摘が出ている。

専門家は、巡回強化など事後対応中心の警察力だけでは限界があり、危険信号を早期に把握し、保健・福祉体制と連携する予防構造が必要だと指摘している。

警察庁によると、2023年から2025年までに発生した異常動機犯罪は計127件だった。年別では2023年46件、2024年42件、2025年39件で、毎年40件前後が繰り返されている。

類型別では、2023年が殺人5件、殺人未遂4件、傷害26件、暴行11件▽2024年が殺人5件、殺人未遂20件、傷害9件、暴行8件▽2025年が殺人4件、殺人未遂7件、傷害17件、暴行11件と集計された。3年間の殺人と殺人未遂を合わせると45件で、全体の35.4%に達する。

異常動機犯罪は、かつて韓国メディアで使われていた「ムッチマ犯罪(誰でもよかった犯罪)」に代わる用語だ。2000年代初めから不特定の人を対象にした犯罪をめぐって「ムッチマ犯罪」という表現が使われ、2012年の議政府駅・汝矣島切りつけ事件以降、検察がタスクフォースを設けて関連研究を進めた。

警察庁は2022年から公式用語を「異常動機犯罪」に変え、2023年の新林駅・書峴駅事件以降、被害者との無関係性、犯行動機の異常性、行為の非典型性などを基準に概念化した。

警察は異常動機犯罪を類型化して管理しているが、実際の予防現場との隔たりは大きい。殺人などの重大犯罪の場合、前科の有無だけでは事前の兆候を把握しにくいためだ。

実際、東義大学研究チームが2026年、学術誌「韓国と国際社会」に発表した論文によると、異常動機殺人犯の初犯比率は42.1%で、傷害の19%、暴行の9.5%より高かった。

同じ研究で、異常動機殺人犯の78.9%は精神疾患を患っており、68.4%は事前に犯行を計画し、78.9%は刃物などの凶器を使っていた。前科者や再犯危険群を中心とした管理だけでは、高リスクの犯行を事前に選別するのが難しいとの指摘が出る背景だ。

別の研究でも、加害者の社会的断絶と精神健康問題が主な特徴として挙げられた。韓国刑事・法務政策研究院のユン・ジョンスク先任研究委員の研究チームが2024年に発表した報告書で、異常動機犯罪者244人の捜査・裁判記録を分析した結果、犯行動機は酒に酔った状態での無動機が32.4%で最も多く、精神科的問題27.5%、怒りの表出18.9%の順だった。

光州事件は異常動機犯罪ではなかったが、被害者と容疑者の無関係性だけで犯罪の性格を判断することは難しいという点を示した。捜査初期には異常動機犯罪に分類されたが、捜査過程でストーカー被害の通報や犯行準備の状況などが明らかになり、憤怒犯罪であり計画犯罪と再定義された。

犯罪名の分類よりも、112(日本の110番)の段階で表れた危険信号を早期に評価する体制が必要だという指摘が出ている理由だ。

チャン・ユンギ(23)容疑者は、前科や精神疾患の治療歴がなかったことが分かっている。警察は、チャン容疑者がストーキングしていた20代の外国人女性を殺害しようとしたが見つけられず、面識のない女子高校生を襲ったと判断した。

犯行の2日前には、この女性に関する112通報が寄せられていたが、現場で終結処理された。ストーカー被害の通報、暴行の状況、性暴行容疑、凶器の準備など高リスクの兆候が事前に表れていたにもかかわらず、その後の犯罪予防体制にはつながらなかった。

警察庁は最近、「異常動機犯罪危険性評価ツール高度化」の研究委託に着手した。既存の危険性評価ツールを運用してきたが、海外事例の分析と概念化の方法を総合的に検討し、現実に合うよう高度化する。

あわせて、5月13日から7月22日までの10週間、「学生に合わせた特別治安活動」を展開する。学校専担警察官と犯罪予防診断チームが合同で通学路の安全診断を実施し、脆弱な地点に犯罪予防施設を集中的に補強する内容だ。

公共の場での脅迫や凶器所持など、異常動機犯罪の前兆となる事件は、112通報受け付け時にコード1以上に指定して総力対応し、凶器所持が疑われる人物への職務質問も積極的に実施することにした。重大な凶悪事件が発生した場合、警察署長が現場に直接出動して指揮する方策も推進中だ。

ただ、専門家は目に見える巡回だけでは限界が明らかだとみている。東国大学のクァク・デギョン教授は「異常動機犯罪は、道の要所を守っていれば防げる性格の犯罪ではない。警察の巡回強化や現場対応だけでは、根本的な予防に限界がある」と述べた。

クァク教授は「犯行前の挫折や孤立、自暴自棄の状態といった危険信号を周囲が早期に見つけることが重要だ」とし、「地域社会と精神健康体制が連携し、相談や治療につなげられる社会的対応が必要だ」と強調した。【NEWSIS チェ・ウンス記者】

(c)NEWSIS

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