
2024年12月3日の非常戒厳令発布から1年。韓国憲法裁判所はこの戒厳を「違憲」と判断し、軍に対する抜本的な改革の正当性が裏付けられた。しかし、戒厳部隊に動員された軍人たちは「命令に逆らえなかった」として被害者の側面もあると主張しており、軍内部では不満の声もあがっている。
国防省は「未来国防構築タスクフォース(民官軍合同特別諮問委員会)」の意見を取り入れ、軍人が明確な違法命令を拒否できるようにする軍人服務基本法の改正案を準備中だ。
改正案では▽憲法や法律に明確に違反する命令▽刑法などに違反し犯罪となる命令▽私的目的のため、または権限外の命令――の場合、命令を拒否できると定めている。
だが、軍内部では混乱が広がっている。現行法では「軍人は上官の職務上の命令に服従しなければならない」と規定されており、戦時・平時を区別せずに命令拒否を可能とすることに懸念が示されている。
ある予備役の陸軍大将は「戦時において『敵陣に突入せよ』との命令が出た際、『被害が懸念されるため従えない』と拒否するようなことがあってはならない」と述べた。
2025年9月、イ・ジェミョン(李在明)現政権による初の軍首脳部人事では、合同参謀本部議長、陸海空軍参謀総長、韓米連合司令部副司令官など、4つ星将官7人が一斉に交代した。さらに、3つ星将官20人の昇進と配置転換も断行され、総計88個の将官ポストが入れ替わる異例の規模となった。
これは1993年、当時のキム・ヨンサム(金泳三)大統領が「軍内秘密組織・ハナ会」を粛清した際の20人を大幅に上回る規模だ。
戒厳事態直後、軍は内部調査を実施せず、「検察捜査と大統領選挙を前にして実益がない」との立場を取っていた。しかしイ・ジェミョン政権発足後の2025年8月にようやく関連部隊への調査が始まり、関与が認められた場合、昇進制限などの処分が通告された。
一方で、軍幹部の間では士気の低下や離職の増加が目立つ。2025年上半期、自ら退職を希望した陸海空軍および海兵隊の幹部は計2869人にのぼり、過去最大となった。軍の待遇は依然として厳しいが、「国を守る誇り」で耐えてきた現場に深い傷が残っている。
一部の専門家は「文民統制の強化と軍改革の加速が必要」と指摘している。
「フランスの過去清算」の著者、イ・ヨンウ東徳女子大学教授は「フランスでは、ナチス協力者に対する粛清を通じて、新たな共和国体制の礎が築かれた。清算の成果が次の民主的秩序の基盤となった」と強調する。
また、民族問題研究所のパン・ハクジン企画室長は「韓国軍はこれまで5・18民主墓地に参拝したことがなく、民主主義教育が不足していたため、違憲な戒厳命令を無批判に履行した。12.3非常戒厳とハナ会粛清など、過去の過ちに対する教育の強化が急務だ」と語った。
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