
2024年12月3日午後10時28分、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領(当時)は緊急談話で「自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣言する」と発表した。戒厳布告文には「政治活動禁止」「言論・出版統制」など、軍事政権を彷彿とさせる表現が並び、国民に衝撃を与えた。
ニュースを受けた国会は即座に非常招集をかけ、議員らは深夜にもかかわらず続々と本会議場に集結した。軍部は国会本館への突入を試みたが、議員秘書や市民たちがこれを身体を張って阻止した。
そして12月4日午前1時1分、国会出席議員190人全員の賛成で「非常戒厳解除要求案」が可決され、約2時間後の午前4時20分、大統領は戒厳解除を発表した。
この騒動に、BBCやCNN、ロイターなどの海外メディアは「数十年ぶりの民主主義への重大な挑戦」と伝えた。キャンベル米国務副長官も「韓国情勢に深刻な懸念を持って注視している」とコメントした。英国やドイツなど主要国も懸念を表明した。
経済も直撃を受けた。戒厳令当日のウォン・ドル為替レートは1402.9ウォンだったが、数日で1470ウォンを超え、コスピ指数は一時2360.18まで下落。上場企業の時価総額は140兆ウォン超が吹き飛んだ。
外国人投資家の資金流出も深刻で、5カ月間で18兆ウォンを売り越し、韓国国債の信用リスクを示すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)プレミアムは0.404%まで上昇した。
国会は12月14日、ユン・ソンニョル大統領の弾劾訴追案を可決した。憲法裁判所は2025年4月4日、全会一致で弾劾を認めた。そして6月、大統領選挙でイ・ジェミョン(李在明)氏が当選した。
憲政秩序は回復された。
イ・ジェミョン氏は大統領就任後、国際的信頼の回復に注力した。12日後にはカナダでのG7サミットに出席し、その後も国連総会、ASEAN首脳会議、APEC(アジア太平洋経済協力)、G20サミットと、積極的な多国間外交を展開した。トランプ米大統領との会談では関税の合意や、原子力潜水艦の導入約束も取り付けた。
外国人投資家も信頼を回復し、5~10月には21兆ウォンを買い越し。その結果、コスピ指数は11月4日に過去最高値の4226.75を記録。GDP成長率も、第1四半期はマイナス0.2%だったが、第3四半期には1.2%(速報値)まで回復した。
韓国銀行は2025年の成長率見通しを0.9%→1.0%、2026年は1.6%→1.8%へと上方修正。CDSプレミアムも現在は0.2%台に落ち着いている。
西江大学のイ・ヒョヌ教授は「外交と経済では政府の努力に対する国民的な共感がある。一方で、不動産政策の不透明さや労働政策が労働者寄りに偏りすぎている点など、懸念材料も依然として残る」と指摘している。
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