
韓国全羅南道新安の海上を航行中だった大型旅客船が座礁したものの、乗客・乗員267人全員が救助された。海上警察の総力による救助活動で旅客船からかろうじて脱出し陸地にたどり着いた乗客たちは、ようやく驚いた気持ちを落ち着けて安堵した。今回の事故について、海上警察は運航上の過失などの可能性を含めて本格的な調査に乗り出す。
◆済州~木浦間の旅客船、無人島で「ドン」
木浦海洋警察署などによると、19日午後8時17分ごろ、全羅南道新安郡長山面のチョク島付近の海上で、乗客246人・乗員21人の計267人が乗っていた2万6000トン級の旅客船「クイーンジェヌビアII」が岩の上に座礁したという通報が寄せられた。
通報を受けた海上警察は、警備艦艇17隻と沿岸救助艇4隻、航空機1機、西海特殊救助隊などを急行させ、乗員全員に救命胴衣を着用させるよう措置を取った。
海上警察は、妊婦や高齢者、負傷者の優先順位に従って計6回に分けて救助船に乗せ、木浦の海警専用埠頭まで移送した。船に乗っていた267人は、事故の通報から3時間10分後の午後11時27分にすべて海警によって救助された。
これまでに妊婦や腰の疾患を抱える乗客ら27人が負傷者として暫定的に分類されている。重傷者はいないと海上警察は見ている。
救助された乗客は、木浦海警専用埠頭に順次移送され、近隣の病院で治療を受けたり、臨時宿泊施設などで休息を取ったりしている。ただし、旅客船の曳航などに必要な船員約20人は、海警とともに船内に残っている。

◆救助された乗客たち「命拾いした思い」
海上警察の救助船に乗って事故海域を離れた乗客たちは、木浦海警専用埠頭に次々と到着し、安堵の表情を隠せなかった。
済州旅行からの帰路だった乗客らは、それぞれキャリーバッグやカバンを手に桟橋を急ぎ足で渡り、救急車や移送バスに慌ただしく乗り込んだ。陸地に足を踏み入れた途端、乗客らは安堵のため息をついたり、その場にしゃがみこんだりして緊張を解く姿も見られた。
ある中年女性は「体が倒れるほど衝撃が大きかった。『ドン』という音の後、もう気が動転していた」と事故当時を振り返った。
70代の男性乗客は「音がものすごく大きかった。けが人が出たのか確認するのに時間がかかった。案内放送は混乱していて、しばらくしてからやっと流れた。放送は『動かずに待ってください』というだけで、苛立つばかりだった」と、混乱した救助の様子に憤りをにじませた。
ほかの乗客らも「2014年4月の旅客船『セウォル号』沈没事故が思い浮かんで胸が締めつけられた」「あと少しで大変なことになるところだった。体は無事だよ」「もう心配しないで」と、家族に電話で無事を知らせていた。
乗客らは20日午前0時35分までに順次陸に到着し、病院へ搬送されたり臨時の宿泊施設へ移された。現在までに重傷者はおらず、負傷者27人を除いた乗客たちは木浦市内のホテルなどに用意された臨時宿舎で過ごしている。

◆運航ミスに重きか…海警が本格調査へ
海上警察は、夜が明け次第、今回の座礁事故の原因について本格的な調査に乗り出す。
事故を起こした旅客船は航路を逸脱し、無人島である「チョク島」に船首が乗り上げた状態で15度以上傾いた。
事故現場はチャンサン島とチョク島など、複数の無人島が点在する狭い海域だ。南側にはチョク島を含め、小さな岩礁や暗礁が多く分布していることが知られている。チャンサン島の南側へと湾曲する航路付近には、満潮・干潮時に水面の上下に現れる岩礁や岩島の帯がある。
潮流が島の周辺を回りながら流れることにより、暗礁の周囲には渦流が発生しやすい。周辺海域を航行する船舶が航路を逸れると、同様の事故が起きる危険性が高い場所とされている。
海上警察はまず、船長や機関士らから事故直前の運航の経過や、座礁に至った経緯について集中的に調査を進める。航行システムの異常や航路逸脱など、あらゆる可能性を視野に入れて多角的に検証する方針だ。
キム・ヨンジン海洋警察庁長は緊急現場ブリーフィングで「座礁の原因については追加の調査が必要だ」と前置きしながらも「現時点では船長または航海士の過失と推定している」として、運航ミスに重きを置いた見解を示した。
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