
妊婦の公共交通機関利用を支援するため韓国の地下鉄に設けられた「妊婦優先席」が、有効活用されていない実態が浮かび上がった。
ソウル交通公社によると、2024年に寄せられた妊婦優先席関連の苦情は6286件で、1日平均17.2件に上った。大半は妊婦以外の人が優先席に座り、席を譲らないというものだ。
この制度は2013年、ソウル市の女性政策の一環として導入され、全国に広がった。公社は妊婦優先席を常に空けておくよう呼びかけているが、多くの妊婦が不便を訴えている。
32週目の妊婦はオンラインコミュニティで「バッジを忘れてしまったが、おなかは明らかに目立つ状態。それでも誰一人席を譲ってくれなかった」と嘆いた。
バッジを着けていた別の妊婦も「妊婦席に座っている人は皆、目を閉じて知らん顔。私のほうを見ようともしない」と不満を漏らした。
人口保健福祉協会が実施した調査では、妊婦優先席を利用したことのある妊婦1000人のうち57.6%が「不便を感じた」と回答。その理由として「一般人が席を譲らない」が73.1%に達した。
ソウル交通公社は車内放送や広報映像などで啓発しているが、効果は薄く、センサーを設置する案も浮上。実際、光州(クァンジュ)都市鉄道では、赤外線センサーで着席を検知し、音声で案内するシステムが導入されている。
だが専門家は、こうした措置は予算の無駄遣いや市民間の対立につながる恐れがあると懸念している。高麗(コリョ)大学のキム・ユンテ社会学科教授は「強制よりも市民が自発的に妊婦に配慮する文化の定着が求められる」と述べ、広告やキャンペーンを通じた啓発の必要性を強調した。
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