2024 年 11月 27日 (水)
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[KWレポート] 「その小道具、広告ですね?」韓国ドラマ、大人の事情(5)

ブランデッドコンテンツはどこに向かうのか

ウェブドラマ「バイト・シスターズ」/写真=ハンソム©MONEY TODAY

韓国ドラマを見ていると、不自然な形で商品が“こちら”を向いていることがあります。この「間接広告」(PPL)と呼ばれる手法は、高騰する制作費をまかなうための苦肉の策といわれてきました。しかしOTTの登場に加え、企業自ら優れたコンテンツを世に送り出すという手法も普及して状況が変わったようです。韓国の現状を見てみましょう。(最終回)

現行のPPL規制は、どうやらあいまいなものらしい。ある時は大丈夫だが、ある時はささいなことで問題視される。明確でない物差しが、制作者と広告主を苦しめている――「PPL界のゴッドファーザー」こと、PPLマーケティング会社「AZnis」代表のチェ・チュンフン氏がこう指摘する。

放送法施行令によると、PLLは「番組の内容・構成に影響を及ぼしてはならず、視聴の流れを妨げてはならない」とある。規定に違反するかどうかは、放送通信審議委員会委員の主観と裁量にかかっている。

最近、芸能PPLが増えたのも、これと無縁ではない。「ドラマにはストーリーがあるので、表現に制約がある。一方で、バラエティーは面白おかしく表現できる」(チェ代表)。これまでPPLにおけるドラマと芸能の割合は9対1だったが、いまや6対4まで迫っている。

コンテンツ市場の活性化とともに、グローバルPPL市場も拡大する、というのがチェ代表の見方だ。「PPLがあったからこそ、韓国コンテンツが今のように成長したのだと思う。韓国コンテンツの地位に合うようなPPLシステムに発展させることが今後の課題だ」

◇過度なPPLより……

100年前からソウルに暮らす3人のバンパイア(吸血鬼)が、悩みを抱えた人間を助けるウェブドラマ「バイト・シスターズ(BITE SISTERS)」。公開10日間で、検索数累計が400万ビューを超えた。

人間を信じないバンパイアたちの話を盛り込んだファンタジードラマだ。このコンテンツは現代百貨店系列アパレル企業「ハンサム」のYouTubeチャンネル「Put Your HANDSOME」が制作した。引き込まれるようなストーリーのおかげで、ウェブドラマの放映以後、売上は2倍以上に増え、俳優たちが実際に着ているジーンズやシャツなどは完売した。

業界関係者によると、最近、このように企業が自主制作した「ブランデッドコンテンツ」(企業の広告コンテンツの一種。見る側に、自社の姿勢や理念に共感を抱いてもらえるように誘導する、ストーリー性のある映像)が注目を集めている。

放送番組の既存の基準に縛られず、商品の特徴に合わせて企業がストーリーを構成できる。主要放送局ドラマによる過度なPPLでブランドイメージが損なわれる例が相次ぐ一方、商品価値をそのまま生かした「ブランデッドコンテンツ」に対しては肯定的な評価が出ている。

「今日からエンジンON」のワンシーン©MONEY TODAY

「バイト・シスターズ」以外も、現代自動車のウェブドラマ「今日からエンジンON」は公開12時間で100万回ビューを記録するほど話題になった。「今日からエンジンON」は、現代自動車サービスセンターを舞台に、天賦の才を持つ整備士チャ・デヒョンとマネージャーのノ・ユファが繰り広げるロマンスだ。ストーリーが展開されるサービスセンター内には、新型EV「IONIQ 5」など現代自動車の主な製品が露出している。

「ブランデッドコンテンツ」にも、さまざまな形式がある。モバイル環境に慣れたMZ世代に向け、ドラマから芸能、ドキュメンタリーまで幅広いジャンルのコンテンツが作られ、YouTubeや自社ウェブなどで広く公開されている。

起亜自動車は、総合エンタメ企業CJエンターテインメント(CJENM)と、ヒューマンドキュメンタリー「私が行く道は」を制作し、2020年12月から昨年1月まで、YouTubeチャンネルで公開した。

各分野から選ばれた「影響力のある人物」の成長物語を取り上げるなかで、その人物が起亜車に乗って旅をするようなシーンが収められている。

「こっちに来たまえ」のワンシーン©MONEY TODAY

コンビニチェーン「GS25」は、公式YouTubeチャンネル「こっちに来たまえ」で、ネット芸能の「学べないやつら」「ヨンミョン2 5全部くれた」を公開。コメディアンのイ・ヨンジンとキム・ヨンミョンが出演する芸能番組で視聴者の反応を引き出している。この効果により「こっちに来たまえ」は昨年11月の段階でチャンネル登録者数80万人を突破している。

「ブランデッドコンテンツ」人気が放送トレンドを変えているという側面もある。最近、芸能番組ではPPLであることに触れながら、コンテンツ効果を高めている。

CJENM運営のテレビチャンネルtvNの「ユキッズ・オン・サ・ブロック」では、ユ・ジェソクとチョ・セホが、ある専門店でサンドイッチを食べながら「セホや、口を開けよ。制作費が入ってくる」と、あからさまにPPLである点に触れたりもしている。MBCバラエティー番組「撮るなら何する」でも、番組制作を助けるありがたい品物、と言いながら宣伝している。

ブランデッドコンテンツについて、文化評論家のハ・ジェグン氏は「宣伝コンテンツとして、企業がきっちりと制作するなら、視聴者にも嫌がられず、ブランドに対する好感度も高められる」と分析する。「若い消費者は短いコンテンツの消費に慣れているため、彼らをひきつけるため、企業は試行錯誤を続ける必要がある」とも指摘する。

(おわり)

「『その小道具、広告ですね?』韓国ドラマ、大人の事情」はMONEY TODAYのピョン・フィ、キム・スヒョン、チャ・ヒョナの各記者が担当しました。

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