
韓国大田市の大田オーワールドで発生したオオカミ脱走事件をきっかけに、施設全体の動物福祉や運営体制への批判が強まっている。市民団体は、今回の問題を単なる事故ではなく構造的な問題の表れと指摘し、大規模な再開発計画の見直しを求めている。
環境団体によると、施設内では以前から動物の常同行動(意図の分からない行動が反復されること)が確認されていた。プレーリードッグがガラスを繰り返し引っかく、ペンギンが進めない場所へ向かって同じ動きを続けるなど、ストレス環境で見られる異常行動が複数の区域で観察されていたという。
団体は、観覧を重視した構造や遊具の騒音、狭い飼育空間が複合的に影響しているとし、「特定の展示の問題ではなく、運営全体の問題だ」と指摘している。
こうした中、2031年までに約3300億ウォン(約355億8000万円)を投じる「再創造事業」への批判も広がっている。同事業は大型遊具の拡充やウォーターパーク、グランピング施設の導入など観光・娯楽機能の強化を柱としているが、団体側は「動物福祉より消費型施設に重点が置かれている」と反発している。
専門家からは、施設の拡張だけでは本質的な改善にはならないとの指摘も出ている。野生のオオカミは広範囲を移動し群れの構造も流動的だが、動物園ではそのような自然な生態を再現することは難しいとされる。「展示のための飼育では生態を十分に伝えることは難しい」との見方だ。
さらに、人員不足による管理体制の脆弱さも問題視されている。限られた飼育員が多数の動物を担当する現状では、動物のケアや安全管理が十分に機能しにくいとされる。
市民団体は、行政主導の運営体制そのものを見直し、動物福祉の専門家や現場関係者が主体的に関わる仕組みへ転換する必要があると主張している。
今回の脱走事故を契機に、再開発計画を一度停止し、方向性を再検討すべきだとの声が高まっている。
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