
信号待ちの列をすり抜け、猛スピードで交差点を暴走する1台のワゴン車。タクシーや壁に次々と衝突しながらも逃走を続け、最後は車を乗り捨てて路地へと消えた。逮捕された20代の男が口にしたのは「私は北朝鮮から来た」という不可解な言葉だった。ソウル市瑞草区で起きた緊迫のカーチェイスと、危険を顧みず容疑者を追跡した市民の逮捕劇の全容が、ドライブレコーダーの映像とともに明らかになった。
事案が発生したのは今月7日の午前1時半ごろ。瑞草区の盤浦大路付近で、黒いワゴン車が信号を完全に無視して交差点に突入し、左折中だったタクシーに激しく衝突した。衝撃でタクシーの部品が路上に飛散し、ワゴン車も後部ドアが跳ね上がるほどのダメージを負ったが、運転手は車を止めることなくそのまま現場を走り去った。
この様子を目撃した車の男性が、同乗していた恋人に警察への通報を促すと同時にワゴン車の追跡を開始した。高速で逃走を続けるワゴン車は、その後も別のタクシーや地下車道の分離壁に相次いで衝突。さらに、バックで方向転換を試みた際に男性の車とも接触した。
執拗に逃げ続けた運転手だったが、突然道路の真ん中で車を乗り捨て、路地へと走り出した。エンジンがかかったまま放置された車は、中央線を越えて対向車線へと転がり、一歩間違えればさらなる大惨事を招きかねない危険な状態だったという。
男性は車を恋人に託し、走って男の後を追った。付近の居酒屋に身を隠していた男を見つけ出すと、20代とみられる男は足元をふらつかせながらも、男性に向かって「私は北朝鮮から来た。すまない」と脱北者を装うような言葉を口にした。
警察の調べによると、男が運転していたのは大型タクシーとして使用されているワゴン車で、事前に盗んだものだった。男は男性が目撃する前にも複数の事故を起こしていたという。男性は「車を捨てて逃げる姿を見て、さらに大きな事故が起きるのを防ぐためには、あの男を捕まえるのが先決だと判断した」と当時の緊迫した心境を振り返った。
男からは強い酒のにおいがしたものの、警察の飲酒測定を拒否したため当時の正確なアルコール度数は確認されていない。簡易薬物検査は陰性だったが、警察は国立科学捜査研究院に精密鑑定を依頼し、詳しい動機や余罪を追及している。なお、警察は危険を顧みず容疑者の検挙に大きく貢献した男性に対し、表彰を検討している。
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