2024 年 4月 23日 (火)
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[KWレポート] 「その小道具、広告ですね?」韓国ドラマ、大人の事情(2)

制作費を、どう工面すれば…

ディズニープラスオリジナルドラマ「ムービング」/写真提供=カカオウェブトゥーン©MONEY TODAY

韓国ドラマを見ていると、不自然な形で商品が“こちら”を向いていることがあります。この「間接広告」(PPL)と呼ばれる手法は、高騰する制作費をまかなうための苦肉の策といわれてきました。しかしOTTの登場に加え、企業自ら優れたコンテンツを世に送り出すという手法も普及して状況が変わったようです。韓国の現状を見てみましょう。(シリーズ2/計5回)

米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」、動画配信サービス「アップルTV+(プラス)」など、グローバルOTTが韓国に上陸し、現地のOTTも大規模投資に乗り出した。

SKテレコムが筆頭株主の「ウェーブ(WAVVE)」は今後5年間、1兆ウォン、総合エンタメ企業「CJエンターテインメント」(CJENM)「TVING」やKT「シーズン」は3年間、4000億ウォンを投資し、オリジナルコンテンツを発掘すると公言した。これまで韓国市場には存在しなかった「歴代で最も高額な投資」だ。

それでも業界からは「それでも十分ではない」という声が漏れる。数百億ウォン台の「テントポール」(巨額制作費、著名な制作陣によって興行を展開する作品)が多い最近のドラマ制作環境では「何本も作れない」ということだ。

実際、tvNの「智異山」は300億ウォン以上、昨年上半期に人気を集めた「ヴィンチェンツォ」(主演ソン・ジュンギ)と「シーシュポス」(主演パク・シネ)は200億ウォン台のドラマだ。

韓流ドラマを物量攻勢で刺激したネットフリックスは「キングダム」に200億ウォン、「スイートホーム」に300億ウォン、「イカゲーム」に250億ウォンを投じた。最近上陸したディズニープラスも、有名なウェブトゥーン作家、カンプル原作のドラマ「ムービング」に500億ウォンを投じると予告した。

このように大作が増え、費用を工面しなければならない韓国コンテンツ制作陣の悩みも深まる。韓国プラットホームの場合、依然として制作費を十分に保障できていないケースが少なくなく、それがPPLへの依存度を高める要因になっている。

PPLが公式に認められた2010年代初頭――。ドラマ全体の制作費に占めるPPLの割合は数%にとどまっていた。だが最近は20~30%にまで上がったという。既存の放送局に続き、OTTなどのチャンネルが急増し、限られたマーケットで、こうした企業が「われ先に」とコンテンツ制作に乗り出している、その結果だ。

◇不足した制作費を確保

編成権を持つ放送局が、制作会社にドラマを外注しながら十分な制作費を支給しない「慣行」は依然、残っている。

通常、確保できる制作費は50%前後。残りは海外先行販売で埋め合わせる必要がある。それは「俳優の人気」に左右される側面もある。結局、制作会社が自らの手で、不足した制作費を確保できる手段――それがPPLなのだ。

広告産業調査報告書(2020)の媒体別PPLの取扱額をみると、資金力のある地上波テレビのPPL取扱高は2018年の573億ウォンから翌19年は495億ウォンに減った。一方、投資力が不足するケーブルテレビは同時期に498億ウォンから602億ウォンに急増している。予算が足りないという状況が深刻化すればするほど、PPL依存も深まる。

最近、ドラマ市場から大河ドラマが消え、フュージョン時代劇が増えたのもPPLと無関係ではない。

これまで大河ドラマを生み出してきたKBSは、2016年の「チャン・ヨンシル」を最後に、時代劇をやめてしまった。衣装やセット、膨大な人件費が投入されたにもかかわらず、PPLに関する制約が想定以上に大きかったという事情があるようだ。

一方、現代と過去を行き来するいわゆる「タイムスリップ」フュージョン時代劇は制作費調達は難しくない。ドラマのあちこちにPPLを配置できるからだ。

昨年の国政監査で、KBSのヤン・スンドン(梁承東)社長が「太祖イ・バンウォンとホン・ボムド将軍に光をあてた大河ドラマを作る」と述べ、大河ドラマ復活を告げた。ただ、同時に受信料引き上げも明らかにしたことから、KBSの想像とは裏腹に、国民の反発は強く、辛うじてよみがえった大河ドラマが、いつまた消えるかという状況にある。

制作費をしっかり工面できるかどうか――。結局、これがPPLをめぐる論争から抜け出すポイントといえる。ただ、最近の地上波放送局の経営難と、国内OTTの資金力の限界を考えれば、道のりは険しい。

韓国放送学会が昨年9月に開催した討論会で、崇実(スンシル)大のキム・ヨンヒ教授は厳しい見方を示した。

「規模拡大によって生み出されるメリットによって競争力を確保しなければならないが、国内のOTTはそういう環境にはない。韓国のマーケットには限りがある。海外進出を果たすか、事業者間の協力を通じて加入者拡大を図るか。そうした戦略が必要になってくる」

(つづく)

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