
人工知能(AI)がコードを書く時代が到来し、ソフトウェア(SW)専門家の競争力はプログラミング言語ではなく、問題を定義してビジネスの流れを読み取る思考力にある――こんな分析が示された。単なるコーダーではなく、戦略家や設計者への転換が求められることから、今後の開発者教育や採用基準にも大きな変化が予想されている。
韓国・延世大学工学部技術政策協同課程のキム・ドゥクジュン博士は最近、「生成型AIの登場によるSW専門家の核心的能力変化に関する研究」という論文を発表した。この研究は、平均20年以上の実務経験を持つ専門家を対象に調査したもの。「ChatGPT」リリース以降、生成型AIを定期的に活用してきた人々が参加し、現実に基づいたインサイトが導き出された。
この論文ではソフトウェア専門家の能力をハード能力、ソフト能力、新たに登場したAI活用能力の三つに分類している。特に生成型AIの普及に伴い、思考中心の能力が急浮上しており、単なる知識ベースの能力の重要性は相対的に低下していると評価した。
研究によると、現在は設計経験やビジネス領域の知識といった伝統的な専門性が重要とされている。だが、今後5年以内に、問題定義能力、文脈把握能力、戦略的思考が核心的資産になると見られている。たとえば、コーディング能力よりもプロジェクトの方向性やユーザーのニーズを見抜く認知的能力がより重要になる時代が到来しているということだ。
生成型AIをどれだけうまく扱えるかが核心的競争力として浮上しているという結論も導かれた。そのため、多様なAIツールを組み合わせ、適切なプロンプトを設計し、最新の技術トレンドを学ぶ能力が強調されている。一方で、テストコードの作成や業界標準の知識のように機械が自動化できる能力は代替可能性が高いと分析されている。
研究ではこれを構造化し、「AI-SPEC」というフレームワークを新たに提示した。AI活用能力、ソフト能力、パーソナル能力、ハード能力、ソーシャル能力の5つの軸で構成されており、それぞれの項目ごとに重要性の変化の流れを視覚化している。今後の教育や政策設計時の参考基準として機能する可能性がある。
核心的な13の能力には、最新技術の習得やAI活用、倫理的責任感といった能力だけでなく、大局を見る能力、顧客理解、挑戦的な問題解決、新技術の受容性といった人間中心の思考能力まで含まれている。
また今回の研究は、個人だけでなく企業、大学、政府など各主体に対しても明確な行動指針を提示している。研究では企業がソフトウェア開発の全ライフサイクルに生成型AIを積極的に導入し、社員を対象とした再教育を通じて新たな核心的能力を内面化することを求めた。そのためには、最高AI責任者(CAIO)を設置し、AI活用のための予算を別途に配分するなど、組織のガバナンス体制を転換する必要があるという分析だ。
大学の役割についても明確に言及されている。従来の暗記中心の教育から脱却し、思考力と創造的な問題解決能力を中心としたカリキュラムへ改編し、生成型AI活用能力とAI倫理教育を必修科目として編成するべきだという。また、AI-SPECで提示された思考関連能力は教育課程と直接的に連携されるべきであり、教育制度全体に構造的な調整が求められている。
韓国政府は国家競争力の確保のためにAI関連の政策支援にさらに積極的に取り組むべきだという指摘もある。国民のAIリテラシーを高め、産業別のAI導入と活用を促進し、生涯学習および職業転換のための訓練プログラムを整備する必要がある。さらにAI倫理基準と規制フレームワークを構築し、AIの社会的受容性と信頼性を確保することも政府の役割として示された。
キム・ドゥクジュン博士は「生成型AIの登場によってコーディングというツール自体の希少性は低下している。人間がすべきことはツールの能力を理解し、それを設計と問題解決に適切に活用する方向に移っている」と語っている。
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