2024 年 4月 29日 (月)
ホーム特集Startup~成功のカギ地ビール、配車サービスから「ハイブリッド航空会社」に…韓国敏腕マーケターの「読み」

地ビール、配車サービスから「ハイブリッド航空会社」に…韓国敏腕マーケターの「読み」

エアプレミアIMCチーム長のキム・ソンジュ氏(c)news1

「スタートアップの原則の一つは、誰よりも早く失敗するということです。失敗から学び、その失敗についてもシャンパンで歓迎してくれる文化が私は好きです」

韓国の新興航空会社「エアプレミア(AIR PREMIA)」のキム・ソンジュIMC(Integrated Marketing)チーム長はこう力を込める。

大同江(テドンガン)ペールエール(ビール)を作ったスタートアップ「ザ・ブース」、配車サービス「タダ」を手掛けた「VCNC」を経て、今年、エアプレミアに合流した。新たなビジネスモデルである「ハイブリッド航空会社」を提示した「エアプレミア」は、キム・ソンジュ氏にとってもう一つの「スタートアップ」である。

◇航空会社は顧客との接点が長い

キム・ソンジュ氏はIMCチームで顧客経験とブランド経験を担当するマーケターだ。クラフトビールやカーシェアリング、航空産業……。多様な業界を経てきた経験から、これまで価格競争ばかりが続いてきた航空業界にも、今後はカカオバンクやクーパンのような新たなプレーヤーが登場する時期が来ていると指摘する。

「手作りビールとモビリティは新たに胎動する市場だ。差別化されたブランディング活動によって、忠実な顧客を育成することに力を入れた。ポストコロナ時代を迎えた航空業にも、こうした戦略を融合させようと努めている」

エアプレミアは、格安航空会社(LCC)の低価格で大型航空会社のサービスを提供する国内初の「ハイブリッド航空会社」を標榜する。2017年に設立されたものの、新型コロナの影響で運航を始めたのは2021年。主力の長距離国際線を飛ばしてからまだ1年も経っていない。

航空業界での成功は難しい。特にエアプレミアは現在、米ロサンゼルス・ニューヨーク、独フランクフルトのように、10時間以上の長距離路線を中心に運行している。

航空会社はチケットの前売りから、空港で発券して飛行機に留まる時間まで、顧客との接点が長い。このため、他産業とはマーケティングで差が大きい――キム・ソンジュ氏はこうみる。

「韓国高速鉄道KTXで駅員がタブレットに入力して座席確認するほど、世の中はデジタル化されている。半面、航空業は食事タイムになれば、乗務員がいちいちメニューを確認しなければならない。IT技術であらかじめメニューを決めるだけでも、不必要なコミュニケーションを減らすことができる」

◇乗客の正直なフィードバック

業界外から来たキム・ソンジュ氏の見方は冷静だ。

後発走者として、まだ力量が不足しており、ブランド認知度も相対的に低い。長距離路線では地位が確固たる大型航空会社と競い、短距離路線ではLCCと価格競争をしなければならない。

そのため「同じ路線・時間なら、躊躇なくエアプレミアを選択する」という忠実な顧客を捕まえるブランディングに力を入れている。グローバル航空会社の中でも最も広い35インチのエコノミー座席も、エアプレミアが追求する付加価値が反映されたものだ。

「過去は、ブランドが他社と自社を区別する要素だった。だが現在は、似たような製品を売る時に“いかに思い起こさせるか”が重要だ。機内食や器、シートカバー、カーペットまで、一貫して顧客が追求する価値に合わせることに努めている」

マーケターとして、キム・ソンジュ氏は「乗客の正直なフィードバック」からインスピレーションを得る。

「乗客に『私がこの航空会社に乗り、ケアを受けているんだ』という感じを与えてこそ、本当に仕事ができる会社になることができる」

ある乗客はアンケート調査で、エアプレミアの座席について「ほんの少しの違いが喜びの違いだ」というフィードバックを残したという。徐々にブランドを築きつつあるエアプレミアの小さな成果だ。

「一度乗ってみれば他の航空会社には乗れなくなるくらいの、エアプレミアらしさを作りたい」。キム・ソンジュ氏はこう意気込む。

(c)news1

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