
映画「友へ チング」の題材としても知られる韓国・釜山の二大暴力団「七星(チルソン)派」と「新20世紀派」を巡る襲撃事件の裁判で、対立組織への報復を巡り法廷に立った幹部ら上層部が「無罪」、実際に犯行に及んだ末端組員が「有罪」となる判決が出た。上層部が罪を逃れ、末端に責任を押し付ける「トカゲのしっぽ切り」ではないかとの指摘が専門家からも上がっており、司法判断の妥当性を巡り波紋が広がっている。
新20世紀派の上級幹部ら30代の組員3人は、対立する七星派への報復を指示したとして暴力行為等処罰法違反(団体構成・活動など)の罪に問われたが、1審で無罪判決を受けた。一方、指示を受けて実際に報復暴行に加わった罪に問われた20代の末端組員には、有罪判決が言い渡された。
事件が発生したのは2025年4月。七星派の組員が新20世紀派の組員を凶器で襲撃する事件が起き、その数時間後、新20世紀派の組員ら15人が釜山市内のカフェに集結した。検察側は、この組織的な動きの背景に内部命令があったと判断。七星派への報復命令のもと、組員らが市内の各エリアに分かれて敵対組織を捜索し、その過程で20代組員らのグループが七星派の組員1人を暴行して全治6週間の重傷を負わせた、と結論付けた。
法廷で幹部ら30代組員は「後輩に集合命令を出した事実はなく、一部の独断による行動だ」と関与を否定。実行役の20代組員も「自分は組員ではなく、暴行は偶発的なものだった」と主張した。
裁判所の判断は明暗を分けた。幹部らについては、報復のための指示が下されたことを裏付ける通話記録やメッセージなどの「直接証拠」が不足しているとし、犯罪組織の一員として活動した事実が完全に証明されたとは言えないと結論付けた。一方で20代組員に対しては、他の下級組員との通信アプリのやり取りなどから組織的な報復への加担が認められるとして、別件と合わせて懲役1年10カ月の実刑を言い渡した。
この判決に対し、暴力団特有の「しっぽ切り」が法廷で通ってしまったとの批判が出ている。上層部の指示なしには組織的に動けない暴力団の統制体系という「現実」が、裁判所の判断に十分に反映されていないとの指摘だ。
ハン・ギシク弁護士は「直接証拠がない点を根拠に無罪としたが、様々な状況証拠は十分にあった。裁判所は間接証拠の評価に消極的だったと言わざるを得ない」と指摘。「組織の統制体系上、上層部の指示なしに後輩たちが一斉に報復へ動くことは困難だという点も十分に考慮されるべきだ。控訴審でこれらの状況を繋ぎ合わせ、命令の存在を合理的に推論できれば結論は変わり得る」としている。
両組織は1980年代から現在に至るまで、釜山地域における利権や組織のメンツを巡り、凄惨な抗争を続けている。
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