2024 年 5月 4日 (土)
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[KWレポート] 数字だけで評価できない「K-POPのゴッドファーザー」のプロデュース (1)

SM離脱のリスク

H.O.T(写真=SMエンターテイメント提供)©STARNEWS

韓国の芸能プロダクション「SMエンターテインメント」の総括プロデューサー、イ・スマン氏(70)は「K-POPのゴッドファーザー」と呼ばれています。そのイ・スマン氏のSM離脱がK-POP界に波紋を投げかけています。状況を取材しました。(シリーズ1/3)

◇仕事独占集中発注

イ・スマンの成果についての評価があまりにも算術的なことだけに重点が置かれていると指摘されている。株式市場などで受け取るお金と、関連する金額の絶対額だけに焦点を合わせているため、K-POPの成長物語などの文化的な側面が見過ごされているという分析だ。

SMは最近、「ライク企画」とのプロデュース契約の早期終了を通告を受けて検討していることを公表した。ライク企画はSMの創業主でもある総括プロデューサー、イ・スマン氏の個人事業だ。

これに先立ち、アラインパートナーズ(Align Partners)資産運用などはSMとライク企画がプロデュース契約を結んで、関連する売り上げの一定の比率を印税でやり取りする方法で「仕事独占集中発注」をしていると批判してきた。一部ではこの点を挙げて「創業者リスク」を強調した。

また、イ・スマン氏とSMのプロデュース契約の早期終了検討のニュース以後、SMの株価がしばらく上昇したことを喜ぶ雰囲気も出てきた。ただ一方で、イ・スマン氏がSMを離れることが本当のリスクになりかねないという懸念が出ている。

イ・スマン氏(写真=SMエンターテイメント提供)©NEWSIS

◇人気アイドルの誕生に貢献

イ・スマン氏はK-POPの父といわれる。韓流の先陣を切ったK-POPアイドルの典型的なスタイルを作った人物ともいわれる。

SMは1995年、SM企画を母体に立ち上げられた。SM企画はイ・スマン氏が設立した会社だ。

韓国アイドルグループの基礎を築いたH.O.Tのほか、S.E.S、神話(SHINHWA)、BoA、東方神起、スーパージュニア、少女時代、SHINee(シャイニー)、f(x) (エフエックス)、EXO(エクソ)、RedVelvet(レッド・ベルベット)などのトップアイドルグループを世に送り出してきた。

こうした人気アイドルの誕生に、イ・スマン氏は制作者として大きな役割を果たした。

メンバーを受け入れるのが自由で、その数に制限がないというのが特徴のNCT、メタバースを導入したエスパ(aespa)が最近人気を集めている。NCTのユニットであるNCTドリームと、NCT127は、韓国のアーティストの夢舞台であるオリンピックメインスタジアムにそれぞれ立つ。

こうしたアーティストの活躍の土台には、イ・スマン氏の「先を見通す慧眼」があるという評価も出ている。

◇ノウハウにロイヤリティ

SMはこれまで、給与形態ではなくプロデュースのノウハウ活用に対する名目でイ・スマン氏にロイヤリティを払ってきた。イ・スマン氏はSMから給与、賞与、車両などの福利厚生を提供されたことがない、といわれている。

自身の創作活動に対するロイヤリティーを受け取るのは、音楽業界の創作者が生き延びていくための布石でもある。後輩プロデューサーも業界内で認められ、富と名誉を得られるように道を開く、という信念によるものだという。

業界関係者によると、イ・スマン氏のプロデュースロイヤルティ収入の総額は約1500億ウォン。年平均70億ウォン、税引き後はおよそ35億ウォンと推定される。特定の産業分野の創始者に与えられた所得からすると、韓国内外の類似の事例に比べると、決して多くない金額だ。

特にイ・スマン氏が最近プロデュースしたNCT、エスパがSMの売り上げに大きな役割を占めるようになったことを考えれば決して多いとはいえない。

2016年SMの財務諸表によると、売上高は2021億ウォン、営業利益は161億ウォンだった。2016年にNCT、2020年にエスパがそれぞれデビューし、昨年NCTのアルバム販売が1000万枚を突破、SMの売上高は4172億ウォン、営業利益741億ウォンだった。5年前と比べて売上高は2倍以上、営業利益は4倍以上増加した。

イ・スマン氏の手腕によって誕生した新しいスターたちが会社の売上高と利益を大幅に増やしたわけだ。

それに伴いロイヤリティ支給も増加したが、それは2倍程度だった。

イ・スマン氏はプロデュースのノウハウをSMに提供し、これをSMは活用する方法でイ・スマン氏とSMの契約が結ばれた。これらの契約内容から見ると、収益に連動しない給与や賞与の支給方式は適しておらず、関連する売上額の一定比率を支給するロイヤリティ方式が適している。

プロデューサーの役割は創作の領域に属する。ただ、これを「単に費用の問題」と考える向きも一部にはある。一方で、それがむしろ「金の卵を産むガチョウの腹を割くような行為」になるのではないか、と懸念する声も上がる。

(つづく)

©NEWSIS

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