2024 年 5月 6日 (月)
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[KWレポート] 北朝鮮の聖地・白頭山が噴火したら… (3)

経済・産業などに複合被害

スペイン領カナリア諸島のラパルマ島にあるクンブレビエハ火山が噴火©news1

南太平洋・トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火は、改めて「火山の恐怖」を思い起こさせました。北朝鮮と中国の国境にある白頭山や日本海の海底火山はもちろん、日本の富士山なども噴火する可能性があり、もはや朝鮮半島は「安全地帯」ではないとの見方も出ています。それらの火山が噴火する可能性と被害規模、対策をまとめてみました。(シリーズ3/4回)

◇ジェット気流で韓国に打撃

アイスランドで2010年4月、火山爆発指数(VEI)5規模で火山が噴火し、翌日から欧州の航空路線が大混乱した。

火山灰が成層圏(10~50キロ)まで噴き上がったからだ。火山灰は飛行機のエンジン故障の原因となる。当時、国際航空運送協会(IATA)は「大噴火により世界の航空便の29%が欠航となり、少なくとも17億ドルの被害を受けた」と発表した。これについて専門家は、火山噴火を単なる災害ではなく、経済・産業など全分野に被害を与える「複合災害」とみなすべきだとの指摘も出ている。

科学関係者によると、先端産業の輸出に依存する韓国の近隣で火山の噴火が起きた場合、1次的な災害被害より2次的な経済・産業被害の方が大きいと予想される。

韓国地質資源研究院白頭山火山研究団のクォン・チャンウ博士は「火山の爆発時には上空20~30キロまで火山噴出柱が上がり、火山灰が降り注ぐ。白頭山の場合は、ジェット気流(西→東の風)に乗って韓国に多くの打撃を与えるだろう」と分析した。

ジェット気流は韓国から米国へ移動する経路とかみ合う。クォン博士は「火山爆発は1次被害も大きいが、韓国のような輸出型の国に発生すれば、経済・産業的な影響は甚大になるしかない」と述べた。

◇白頭山噴火で北海道に火山灰

実際、白頭山が946年に火山噴火指数7規模の大噴火を起こした時、北海道など北部地域に火山灰が積もった。偏西風(西→東の風)に乗って咸鏡道→日本海→日本に火山灰が広がったためだ。

これに先立ち、韓国国民安全処も「白頭山が過去と同じ規模で大爆発すれば、韓国の経済的被害は11兆ウォン以上に達する」という分析を出している。専門家は「火山噴火は、事後にできることは多くない。事前準備だけができることだ」と話した。

火山爆発の際には、一次的に火山灰による莫大な被害が発生する。火山灰による呼吸器疾患、土壌酸性化による農作物の被害、太陽光による気候変動の誘発などだ。2次的には空路がふさがり、経済・産業に被害をもたらす。また、地震により、半導体などの超精密が要求される工場の稼動中止なども予想される。

韓国科学技術院(KAIST)電気・電子工学部のある教授は「半導体の生産設備は基本的に耐震設計されている」としながらも「ナノ単位の超精密技術を具現する半導体に地震など微細な力が加わる場合、性能に影響を及ぼす」と説明した。

クォン博士は「火山噴火は起きれば被害は大きいが、事後はすることがない。事前に火山活動を誘発するマグマはどこにあるのか、これによって噴火はいつ起きるのかを予測し、シナリオ別に対策を準備するしかない」と語った。

現在、白頭山や富士山で爆発が起きても、韓国は情報がないため対応できない――クォン博士はこう危機感を募らせる。「不足する能力を育てるためには予算・人材支援だけでなく、国際協力のための省庁間協力と政府レベルの対応が必要だ」と訴える。

釜山大地質環境科学科のキム・ギボム教授は「韓国は火山爆発に対して何の備えもない状況だ。火山と地震などに対して事後収拾ではなく事前対策で認識を変えなければならない」と提言した。

専門家は特に、安全保障面で白頭山噴火の可能性を、他の火山よりも注視する必要があると口をそろえた。北朝鮮と中国の国境地域にある白頭山が過去のように大噴火した場合、対応する余力のない北朝鮮に、韓国、中国に続き米国、日本まで介入し、北東アジアが地政学的な渦に巻き込まれる可能性があるということだ。

(つづく)

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