2025 年 12月 9日 (火)
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AIの歌声は鮮明だが…創作の「権利」はなお曖昧 [韓国記者コラム]

韓国音楽著作権協会(c)news1

「ChatGPT、冬に合うバラードを作るから、Cのキーでコードを作って」

人間は技術の発展によって、音楽制作の速度と手段を飛躍的に進化させてきた。楽譜を手書きしていた時代から、コンピューターでメロディーを打ち込むMIDI作業へ、そして今はAI(人工知能)を「創作ツール」として使う時代に突入している。

AIの登場で「アーティスト」の定義は大きく広がった。音楽の専門家だけでなく、関心さえあれば誰もが作曲に挑戦できる。AIはガイドメロディー、コード進行、ボーカルモデリングまでこなす。人間はそのAIが作った骨組みに、自身の感情や意図を加え編曲し、音楽作品を完成させる。

だが、こうして生まれた音楽が著作権制度のなかでどのような法的地位を持つかは、いまだに曖昧だ。現行の著作権法は「人間の創作物」にのみ保護を認めている。韓国音楽著作権協会は楽曲登録時に「AIの使用有無」を記載させているが、どの程度AIを使えば「創作性が否定されるか」という明確な基準は存在しない。

たとえば、AIが作った音楽の骨組みに人が感情を加えた場合、それは誰の著作物なのか。実務者らは「AIを使うなというのは現実的ではない」と言うが、法律と制度は依然として「人間による単独創作」を前提に設計されている。

この制度と技術の「乖離」は、AIカバー曲の分野で特に顕著に現れる。原曲をそのまま使用していないため著作権料の分配は発生せず、歌手の声を模倣しても、それを保護したり補償したりする制度がない。AIカバーは今、著作権も報酬もない「無国籍地帯」に置かれている。

こうした制度的空白は、音楽業界全体の不安を拡大させる。歌手は自分の声に似せたAIボイスモデルがどこまで許容されるのか分からず、リスナーもAIコンテンツを消費する中で、誰にどんな権利があるのかを判断できない。

ただ、AIが音楽制作の不可欠なツールとなった現在、これを「排除」したり「脅威」として捉えるだけでは限界がある。AIと人間の創作が共存できる構造を、制度として整備することが今こそ求められている。創作の境界が曖昧になる今、明確な基準を設けなければ、権利の衝突や創作者の不安はさらに深まるばかりだ。

この課題を正面から取り上げているのが、韓国音楽著作権協会の第25代会長選挙に立候補した作曲家のキム・ヒョンソク氏と、「ザ・クロス」のメンバーであるイ・シハ氏だ。

キム・ヒョンソク氏は「AIの使用に関する規定が存在しない現状において、協会がまず方向性を提示しなければならない。AIの使用比率や原作者との分配システムを制度化すれば、技術の進化の下で誰もが自由に創作でき、正当な権利を認められる」と述べた。

イ・シハ氏も「AIボイスに対する報酬年金制度の導入、AIベースの業務システムの確立、プロジェクトファイル提出の義務化」などにより、AIクリエイターと音楽作家を区別する制度づくりを推進すると公約している。

音楽は常にその時代の技術と共に進化してきた。しかし、その進化が「創作者の名前」をぼやけさせてしまう方向に進んではならない。

どれだけAIの声が明瞭になっても、その声にどんな「名前=権利」を与えるのかは、人間が決めるべきことだ。今、求められているのは技術ではなく、「権利の明瞭さ」だ。【news1 ファン・ミヒョン芸能部次長】

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