
ソウル市内の地下鉄で痴漢の濡れ衣を着せられ、1年8カ月間にわたる苦しみを味わった男性に無罪判決が下された。この事件では、警察が証拠を誤って扱った可能性が指摘され、弁護側は「意図的な証拠捏造が疑われる」と主張している。
事件の発端は2023年3月。男性はソウル地下鉄2号線の鷺梁津(ノリャンジン)駅から乗車し、江南駅で下車。その数日後、警察から「女性の体を複数回触った疑いがある」と連絡を受けた。当初は詐欺かと思ったが、本当に起訴されるに至った。
警察は「被害者の証言と一致する男性が江南駅で4-1号車から下車しており、その姿を防犯カメラ映像で確認。十数人の写真から被害者が男性を指名した」と説明した。
しかし裁判で明らかになったのは、男性は実際には4-1号車ではなく3-3号車に乗っていたという事実だった。決め手は車両内の座席構造。4-1号車には高齢者用座席があるが、男性が映っていた車両は一般座席であり、構造が異なっていた。
さらに、被害者が着ていた服装についても警察は「カキ色のジャンパーで下半身を覆っていた」と主張したが、実際には灰色のカーディガンであり、証言と一致しなかった。裁判では被害者自身が「提示された写真の女性は私ではない」と証言し、法廷が騒然とした。
こうした状況を受け、男性は最終的に無罪となり、検察も控訴を断念した。しかし男性は「警察からの謝罪も補償もなかった」と憤りを語り、「持病によるパニック障害を抱える中で精神的苦痛が重なり、日常生活もままならない」と訴えている。
男性の弁護士は「警察は防犯カメラの車両番号を間違えたとは思えない。犯人を先に決めて証拠を後から当てはめたようだ」と指摘し、「これは捜査ミスではなく、意図的な捏造の可能性が高い」と批判した。
現在、男性側は当時の捜査官を虚偽公文書作成および職務遺棄の疑いで告発する方針で、「単なる過失ではなく、捜査の枠を超えた人権侵害だ」として法的対応を続ける構えだ。
警察は「当時の捜査に不備があった点は遺憾。意図的な操作ではなかった」と釈明しているが、男性側は納得していない。
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