
韓国の統一地方選挙で前例のない投票用紙の不足事態が発生したことを受け、投票機会を奪われた有権者が国を相手取って損害賠償を請求できるとの見方が法曹界から出ている。公務員の過失による投票権侵害を巡っては、過去の類似事例で1人あたり30万ウォン(約3万3000円)から最大200万ウォン(約22万円)の賠償を国に命じる判決が出ており、今回も国家賠償が認められる可能性が指摘されている。
中央選挙管理委員会によると、今回の統一地方選挙と国会議員再・補欠選挙の投票日、全国1万4288カ所の投票所のうち67カ所で投票用紙が不足し、追加送付される事態となった。地域別ではソウルが35カ所と最も多く、次いで釜山と慶尚南道が各8カ所、大邱7カ所など。実際に投票用紙が底をついたのは50カ所で、うち22カ所では投票が一時中断された。
有権者の権利侵害に対する国家賠償の判例は過去にもある。2015年には、検察職員が受刑者名簿の罪名を誤って入力したことが原因で地方教育行政のトップ(教育監)選挙に投票できなかった父娘に対し、大田地裁が国に各200万ウォンの賠償を命じた。また、2025年には、発達障害のある有権者が大統領選で投票補助などの適切な配慮を受けられなかったとして起こした訴訟で、釜山高裁が投票事務員の対応を「マニュアルに反した恣意的な措置」と認定し、国に各100万ウォンの支払いを命じている。
今回の事態について、慶熙大学法学専門大学院のチョン・ヒョングン客員教授は「公務員が違法に職務を遂行し、個人に損害を与えたケースに該当するため、国への損害賠償請求は可能だ」と分析する。ある高裁判事は、投票できなかった有権者だけでなく、投票用紙の到着を3〜4時間待たされた有権者についても、時間的な被害を主張できるとの見解を示した。また、法務法人ミンのパン・ミヌ弁護士は、基本権の侵害であるため賠償額は200万ウォン水準まで膨らむ可能性があるとし、「損害賠償を請求すれば十分に認められ得る状況だ」と述べた。
一方で、訴訟に要する時間や費用に対して実際の賠償額が見合わない可能性を指摘する声もある。2014年の地方選挙では、投票所の締め切り時刻前に到着したものの、身分証の確認を巡る投票管理官の対応遅れにより午後6時を過ぎて投票できなかった有権者が国を提訴した。裁判所は選挙権の侵害による精神的苦痛を認め、国の賠償責任を判断したものの、選管側が過失を謝罪した点などを考慮し、請求額300万ウォンのうち認められた賠償額は30万ウォンにとどまった。選挙法に詳しい弁護士は、今回も勝訴の可能性はあるとしつつも、原告側が実質的な利益を得るのは容易ではないとの見方を示している。
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