2024 年 5月 13日 (月)
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[KWレポート] 韓流俳優、ハリウッドへの階段(2)

ホワイトウォッシングへの抗い

イ・ビョンホン©news1

この20年間、日本や中国などアジア圏を中心に輸出されてきた「韓流文化」が“最後の未開拓地”といわれた米ハリウッドで脚光を浴びています。韓流俳優たちのハリウッドへの道のりと今後の課題を探ってみました。(シリーズ2/計3回)

◇ハリウッドに吹き付ける多様性の風

ハリウッドは今、多様性の取り入れに忙しい。これが結果的に、韓国俳優にかつてない好機を提供することとなった。

ホワイトウォッシング(whitewashing)――原作を映画化する際、白人ではない配役に、白人俳優をキャスティングすることを指す。20世紀初めからハリウッド映画では白人俳優が黒人やアジア人の配役を演じ、人種差別を生んできた。

2015年の映画『オデッセイ』(リドリー・スコット監督)の公開が、ホワイトウォッシング論争に火をつけた。原作の小説で韓国系として描かれている米航空宇宙局(NASA)所属の科学者に、白人のマッケンジー・デイビスがキャスティングされたからだ。

2016年には日本が原作の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が実写化され、主演にスカーレット・ヨハンソンが抜擢された。だが、この映画はホワイトウォッシング論争により、興行的には失敗に終わった。

映画『攻殻機動隊』の脚本を書いたマックス・ランディスは「アジアの女優の中で、A級であると評価できる人物は少ない」と主張したものの、配給会社は公開後、ホワイトウォッシング問題が興行失敗の原因になったと認めた。

『ドクターストレンジ』(2016)の実写版映画でも、原作ではチベット人男性の老人という設定だったエンシェント・ワン役を、白人女性俳優ティルダ・スウィントンが演じ、論争になった。

そして、2017年には英国出身の俳優エド・クレインが、同じ論争により『ヘルボーイ』リブート版(同じ原作をベースに、かつて作られた映画・ドラマを新たな視点・解釈で再構築したもの)の映画から降板した。ホワイトウォッシング論争が原因で降板したのは『ヘルボーイ』が初めてだった。

◇韓国系、アジア系に存在感

ホワイトウォッシングに対抗する大きなうねりは、映画関係者とファンの果敢な動きで勢いを得た。

韓国系米国人の俳優マーガレット・チョーは、ホワイトウォッシング論争が盛り上がった2016年、ツイッターで「#ホワイトウォッシュド・アウト(Whitewashed OUT)運動」を始めた。同年には『オデッセイ』の主人公に韓国系米国人俳優ジョン・チョーを抜擢するよう求めた「ジョン・チョーを主演に」(#StarringJohnCho)キャンペーンも展開された。

米ファンタジー映画『ムーラン』実写版のキャスティング当時には「#ムーランしっかり作れ」(MakeMulanRight)という運動が繰り広げられ、その結果、中国の俳優、劉亦菲(Liu Yifei)が抜擢された。

この流れに乗って、韓国系、アジア系の映画人はハリウッドで年々、存在感を増している。

ジョン・チョーは『サーチ』(2017)で主演俳優に躍進した。2019年に『フェアウェル』でゴールデングローブ主演女優賞を受賞したオークワフィナは父親は中国系、母親は韓国系の米国人俳優で、この賞を受賞した最初のアジア系俳優となった。

韓国人移民家族の物語を描いた『ミナリ』(2020)は第36回サンダンス映画祭で観客賞、審査員大賞を受賞し、アカデミー授賞式では助演女優賞を受賞した。

中国系クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』(2020)は、2021年に開かれた第93回米国アカデミー賞で作品賞と監督賞や、各種の授賞式で作品賞のトロフィーを獲得した。

(つづく)

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