2024 年 11月 23日 (土)
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[KWレポート] 韓国スタートアップになぜ外国のお金が殺到するのか(3)

“前線基地”で見極め

「優雅な兄弟たち」の公式サイトよりキャプチャー

韓国のスタートアップ企業に、豊富な資金力とネットワークを持つ海外投資家の熱い視線が注がれ、「K-スタートアップのルネッサンス到来」の期待感が、にわかに高まっています。日本よりもマーケットの小さな韓国になぜ、海外投資家が注目するのでしょうか。その理由を探ってみました。(シリーズ3/計4回)

韓国スタートアップの生態系が早い速度で成長し、韓国に支社を設立して直接、“玉石混淆の状態”を見極めて、よい企業を選り分けようとする海外VCも増えている。

業界によると、シンガポールのVCであるアントラー(Antler)は先月、韓国に支社設立を終え、スタートアップの発掘に本格的に乗り出した。

主に初期スタートアップに投資する同社は、ロンドン、ベルリン、ストックホルム、ニューヨークなどに支社を置き、350社あまりの企業に投資した「グローバルVC」だ。アントラーは、専門家マッチングプラットフォーム「スムゴ(Soomgo)」創業者だったカン・ジホ元代表を韓国代表パートナーに選任しており、今後4年間、100社以上の韓国スタートアップに投資する計画だ。

米シリコンバレーに本社を置くアクセラレーター兼VCであるプラグアンドプレイ(Plug & Play)も今年5月に韓国支社を設立し、9月からスマートシティとフィンテック分野のスタートアップ育成プログラムを運営している。

プラグアンドプレイは北米など20カ国でこうした方式でスタートアップを発掘・育成している。同社が手掛けた代表的な企業にはペイパル(PayPal)、ドロップボックス(Dropbox)、レンディングクラブ(Lending Club)などがある。プラグアンドプレイは、韓国支社が発掘した有望なスタートアップ企業に直接・間接投資はもちろん、海外進出の機会も提供する方針だ。

このほか、ストームベンチャーズ、グッドウォーターキャピタル、コラボレーティブファンド(Collaborative Fund)などVCも韓国支社設立を検討している。

海外VCが相次いで韓国支社の設立に乗り出したのは、韓国で初期段階のスタートアップに対する投資を増やすための戦略と解釈される。初期段階では、現地で直接、起業家らと交流し、その接点を重ねない限り、発掘することも、投資することも容易ではないからだ。

ある外資系VC関係者が解説する。

「いくら有名なグローバルVCであっても、現地に拠点を置いて創業家たちと直接交流しない限り、投資するには限界がある。成長可能性が高い初期段階のスタートアップを発掘するのも容易ではなく、投資のためのさまざまな検討や手続きなどを進めるのも容易ではない」

ソフトバンクベンチャーズ(Softbank Ventures)、アルトス・ベンチャーズ(Altos Ventures)、ヨズマグループ(The Yozma Group)、ビッグベイスンキャピタル(Big Basin Capital)なども、同じ理由で早くから韓国支社を設立した。アルトス・ベンチャーズ関係者は「韓国支社を通じて業界関係者とのネットワークを形成しながら、シリーズC以上の後期段階はもちろん、初期投資も増やしている」と述べた。

ソフトバンクベンチャーズも韓国の支社で初期スタートアップを発掘して投資・育成し、後期投資は主に本社のソフトバンクグループのビジョンファンドを通じて投資する戦略を使う。

韓国スタートアップ各社も、海外VCの進出を歓迎する雰囲気だ。海外VCの投資が参考材料となり、追加投資の誘致にも有利に働くうえ、海外進出にも大きく役立つためだ。

韓国スタートアップの世界進出を支援する非営利団体(NPO)「スタートアップ・アライアンス」(Startup Alliance)が、スタートアップの創業者や在職者ら864人を対象に調査した結果、「好ましい投資機関」にアルトス・ベンチャーズが1位、ソフトバンクベンチャーズが3位となったのも、こうした期待があるためだという説明だ。

「韓国の経済規模、産業の力強さ、情報通信技術(ICT)分野の技術力などが海外で注目を集め、成功例が現れることで、グローバル投資家に韓国スタートアップの生態系を再評価する雰囲気がある」(ソフトバンクベンチャーズ関係者)

「ベンチャー市場に多様な投資家が増えれば、それだけ多くのスタートアップ企業の成長に拍車をかけることができる」(アルトス・ベンチャーズ関係者)

それぞれの思惑が交錯する。

(つづく)

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