
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領が7年ぶりに「国家観光戦略会議」を主宰し、観光業界では期待と懸念が交錯している。観光を国家戦略産業へ格上げする包括的支援策には歓迎の声が広がる一方、実効性を伴う会議にできるかが今後の焦点として浮上している。
観光業界によると、青瓦台で開かれた第11回拡大国家観光戦略会議は、開始前から大きな関心を集めた。大統領が直接議長を務めるのは2017年以来で、15省庁の閣僚級が出席し、事実上「観光版閣議」ともいえる規模となった。
政府は訪韓外国人観光客3000万人誘致目標の達成時期を2029年へと1年前倒しする方針を提示した。主な施策として、インドネシア団体客への査証免除の試行、地方空港の国際線拡充、宿泊業振興業務の文化体育観光省への一元化、いわゆる「ぼったくり料金」摘発時に即時退出を命じるワンストライク・アウト制度の導入などを打ち出した。
観光を半導体や自動車に続く中核輸出産業へ育成する意思を明確にした形で、これまで省庁間の縦割り構造に阻まれてきた業界からは、強力な省庁連携への期待が高まっている。
会議では企業関係者からの提案も相次いだ。イ・ブジン委員長は「真の親切とは笑顔だけでなく、観光客の不便を先回りして解消することだ」と述べ、決済や交通面での不便解消に向けた官民協力の必要性を強調した。
また、ファッション企業トップはKファッションを観光資源として育成すべきだと提案し、ソウル市城東区の聖水洞やトゥクソム一帯を特化地区として支援する案を示した。
これに対しイ・ジェミョン大統領は、仁川空港から地方へ向かう直行路線や交通連携の不足を指摘し、「政府の自己満足的な政策ではなく、どこに予算を投じれば市場が拡大するのか」と出席者に問いかけた。
会議後、韓国旅行業協会(KATA)や韓国観光協会中央会など主要団体は、「観光産業の地位向上と迅速な政策実行への期待が高まる」とする歓迎声明を発表した。
一方で専門家からは厳しい見方も出ている。観光エコシステムが個人旅行(FIT)やAIを軸に急速に変化しているにもかかわらず、議論は従来型旅行業の枠組みにとどまったとの指摘だ。縦割り構造の解消や中長期の成長戦略といった本質的課題に十分踏み込めなかったとの評価もある。
さらに、戦略不在のままでは予算が一過性のイベントに流れる恐れがあるとの懸念も示された。地域コンテンツを市場ニーズに合わせて再構築する取り組みを優先すべきだとの提言も出ている。
「来ない人をどう呼び込むのか」「政府はどこに本当に資金を投じるべきか」という大統領の問いに対し、当局や業界が十分に戦略的な答えを示せなかった点は、今後の大きな宿題として残った。縦割りを打破し、具体的な成果を示せるかどうかが問われている。
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